業務量は増えるのに、低賃金のまま。コロナ禍で、保育士が悲鳴を上げている。岸田政権は処遇改善に取り組んだというが、このままでは保育の質の低下が懸念される。AERA 2022年3月28日号の記事を紹介する。
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私って、バイト以下だ。
関西地方の認可保育園で働く保育士の女性(25)は、自分の給与を計算して愕然(がくぜん)とした。
子どもが好きで、3年前に大学を出ると保育士になった。
子どもの発達や成長を促す大切な仕事は、やりがいがある。だけど、給与は手取りで月17万円ほど。時給に換算すると900円程度と、学生時代にアルバイトをしていたレストランの時給より安いことに気がついた。
心から笑うことできず
しかもコロナ禍以降、今まで以上に業務量が増えた。消毒、換気、子ども同士が「密」になるのを防ぐ……。日々の業務に忙殺され、事務作業は時間外労働が当たり前となった。
一人暮らしの部屋の家賃は月5万円。お金のやりくりが厳しい時、昼食はカップラーメン一つ。最近、余裕がなくなったのか、自分でも笑顔が出なくなったと思っている。こんな先生でごめんねと思いながら、子どもたちの前でどうしても心から笑うことができない。女性は言う。
「頑張ってきたけどそろそろ限界。保育士を辞めたいです」
彼女だけではない。
<保育士辞めたい><保育士辞めます><保育士辞めた>──いまSNSでは、こんなフレーズが氾濫している。
「コロナ禍以降、保育士は、消毒作業など新たに増えた業務に加え、子どもたちと自分への感染リスクから緊張感やストレスが高まっています」
と話すのは、保育所の職員らが加盟する「全国福祉保育労働組合(福祉保育労)」中央執行委員の薄(うす)美穂子さん。
同組合では例年、9月から翌年1月にかけ「福祉職場で働くみんなの要求アンケート」を行っている。昨年から今年にかけて行ったアンケートでは2736人が回答。「仕事を辞めたいと思ったことはありますか」の問いに、「辞めたいと思う」と答えた人は「いつも」と「時々」を合わせると68.8%になった。辞めたいと思った理由(複数回答)のトップは「賃金が安い」で33.7%。次いで「体がもたない」(29.8%)、「忙しすぎる」(27%)と続く。