「ただお断りするのではなく、施設に感染管理ができる看護師らを派遣し、対策の指導をして電話やリモートで毎日情報をもらって対応します。しかし限界があります。地域の開業医の協力が必要です。施設の患者さんに飲み薬の抗ウイルス薬ラゲブリオを発症から5日以内に投与してくれたら、重症化がかなり抑えられます」

 ある介護老人保健施設では嘱託医が感染者全員に早期にラゲブリオを投与し、重症化を防いだという。開業医の積極的関与が望まれるが、動きは鈍い。

「施設内で亡くなられた患者さんの多くは短時間で基礎疾患、脱水、低栄養などで急変しています。早期の診断、治療が欠かせない。ワクチン3回目接種も必須です。かかりつけ医の対応が重要なのですが……。この状況で5類にしたら施設内感染はもっと増えるでしょう。結果的に病院への負担も増し、院内感染、病棟閉鎖のリスクが高まりますね」と宮地氏は述べた。

■煩雑な薬の処方手続き

 では、地域でコロナ患者を診てきた診療所の見方はどうだろう。発熱外来を設けている半田医院(兵庫県西宮市)の半田伸夫院長は、これまでに150人以上の新型コロナ患者を診断してきた。自身も家族から感染し、「中等症II」まで悪化。人工呼吸器の装着寸前に抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド系抗炎症薬デカドロンの治療で生還した経験を持つ。

 半田院長が強調するのは「重症化を防ぐ」ことだ。そのために発熱外来を受診した患者が抗原検査で陽性と判明したら、その場で治療薬を処方している。

「抗原検査は、PCR検査よりも感度は低いが、15~30分で結果がでるので、ラゲブリオの対象となる患者さんが陽性なら、すぐ出します。まだ13例ですが、ほとんど副作用はないし、2日ぐらいで楽になっている。ただし、供給量が限られた薬なので処方手続きが煩雑です。センターに登録して1例ごとに処方箋(せん)と適格性情報や同意書の取得などのチェックリストを作る。投与後の患者さんのフォローアップも必要で、年配の開業医は敬遠しがちです」

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