「とにかくかわいくて、苦労だと思わなかった」 脳死状態で生まれた帆花ちゃんと家族のドキュメンタリー映画

2021/12/24 08:00

映画に登場する帆花ちゃん。ドキュメンタリー映画「帆花」(國友勇吾監督)は2022年1月2日から東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開 (c)JyaJya Films+noa film
映画に登場する帆花ちゃん。ドキュメンタリー映画「帆花」(國友勇吾監督)は2022年1月2日から東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開 (c)JyaJya Films+noa film

 脳死状態で生まれてきた少女がいる。ドキュメンタリー映画「帆花」は寝たきりの彼女と家族の3年間の変化を追う。生きるとはなにか。AERA2021年12月27日号の記事を紹介する。

【写真】帆花ちゃんの母・西村理佐さん

*  *  *

 関東近郊のマンションの一室。温かく日差しが入るリビングに帆花ちゃんのスペースがある。介護用ベッドの周りにはたくさんのぬいぐるみや写真が並び、呼吸器をつけた帆花(ほのか)ちゃんが目をあけて横たわっている。

 手に触れるとパンのようにふわふわで柔らかくて思わず頬が緩む。映画「帆花」のシーンに迷い込んだようだ。

 西村帆花ちゃん──。2007年10月17日生まれの14歳。出産時のトラブルで脳に酸素が行き届かず、生後すぐ「脳死に近い状態」と告げられた。

■苦労は考えなかった

 当時は「医療的ケア児」という言葉も広まっておらず、重度障害がある子は、産院から直接施設に入所するケースも多かった。だが両親は帆花ちゃんを自宅に連れ帰ることを決める。

「とにかくかわいくて。自分の子なんだから早く家に連れて帰りたいなぁって。先の苦労はあまり考えていなかった」

 と母の理佐さんは笑う。

 映画では、3歳から小学校入学までの帆花ちゃんと家族の生活が細かく映し出される。理佐さんと夫の秀勝さん、通いの介護士が交代で帆花ちゃんを24時間態勢で見守る。痰の吸引、頻回な体位交換、排泄の介助や体温調節、口腔ケアなどやるべきことは山のようにある。睡眠は1日3~4時間。命を肩に背負う責任が、家族にのしかかる。

 それでも理佐さんも秀勝さんも、訪ねてくる祖父母や友人も多くの時間を笑顔で過ごす。帆花ちゃんの周りには冗談や笑い声が絶えない。なぜか。

「多分、帆花自身に悲愴(ひそう)感がないからでしょうね。赤ちゃんの頃も今も、帆花の顔を見るとほのぼのして、つい疲れも忘れて笑ってしまうんです」

■「声」で意思を示す

 ケアをしながら、絵本を読み聞かせながら、ランドセルの色を画面で選びながら、家族はごくふつうに帆花ちゃんに話しかける。

「ねぇ入学式、紺とフリフリの服、どっちがいい?」

 レースのついたリボンの服を見せると、帆花ちゃんが「うー」と“声”を出す。紺は……お気に召さないらしい。

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