メイフィールドを襲った竜巻で、大きく損壊した住宅と乗用車/12月12日
メイフィールドを襲った竜巻で、大きく損壊した住宅と乗用車/12月12日

 親族の家で一晩を過ごし、翌日にメイフィールドへ戻ったトンプソンさんは、こう思った。

「まるで、爆弾が落ちた戦地の写真を見ているかのようだ」

 竜巻の威力は、街中のいたる場所で感じられた。

 がれきが広がるなか、ぽつんと立っている本棚が目に入った。近づくと、本棚の後ろは小部屋のような構造になっていて、人が出入りしながら片付けを進めていた。弁護士事務所の中で、重要書類などを保管するために強固に作られた金庫室だけが残っていたのだ。

 弁護士事務所の共同経営者の一人、チャック・フォスターさん(70)は10日夕方までここで働き、竜巻が襲ったころには自宅に戻っていた。被害が最も集中したのは、会社などが集まっている地域で、住宅は少なかったという。「数時間前だったら、人的被害がより大きくなっていた」と語った。

 竜巻は、通過した場所に強烈な被害をもたらす一方、少し離れると様相が全く変わることが多い。メイフィールドも、中心部を抜けてしばらく運転すると、再び何もなかったかのような景色となった。

 こうした、被災した場所と、運良く逃れた場所の「境界線」は以前の取材でも実感したことがある。2013年には、オクラホマ州を襲った竜巻の現場で。11年には東日本大震災の津波被災地で。二つを分けるのは、本当にわずかな差だ。(朝日新聞ニューヨーク支局長・中井大助)

AERA 2021年12月27日号より抜粋