深く眠りすぎないようテーブルに突っ伏して寝るのもいい。20分ほど眠れば、ストレスも減って、午後の仕事もはかどるという(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
深く眠りすぎないようテーブルに突っ伏して寝るのもいい。20分ほど眠れば、ストレスも減って、午後の仕事もはかどるという(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 ランチを食べたら眠くて仕方がない。午後の仕事に向き合うにも昼寝が一番。在宅勤務なら気にせずスヤスヤ。だけど寝過ぎは禁物。AERA 2021年12月6日号は、仕事のパフォーマンスを上げる昼寝のコツを紹介する。

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 必ずしも昼寝の効果を感じられない人もいる。

 最もよく聞くのが、「逆に体がだるくなる」という声だ。東京のコンサルティング会社に勤める女性(36)は、休憩時間になると、昼食も取らずにベッドへ直行するという。「もともと夜型で睡眠不足を感じていました。在宅勤務だと人目を気にせず昼寝できます。昼休みの1時間しっかり寝ています」

 その1時間は、ぐっすり眠れている実感がある。にもかかわらず、起きた後、しばらくは頭がボーッとして体がだるい。なぜか。広島大学の林光緒教授(睡眠科学)はこう指摘する。

「昼寝は15~20分程度でいい。30分以上は明らかに寝すぎで逆効果です」

 睡眠は、大脳の活動が低く、「脳の休憩時間」と言える「ノンレム睡眠」と、大脳が部分的に活発に活動して記憶や感情の整理を行うとされる「レム睡眠」を繰り返す。

 最初に現れるのはノンレム睡眠で、昼寝のような短時間の仮眠でレム睡眠が見られることはあまりない。そして、ノンレム睡眠は眠りの深さによって4段階に分けられる。睡眠段階1はウトウトと舟をこいでいるような状態、睡眠段階3や4は、ぐっすりとした深い眠りだ。

「パフォーマンスを上げるための仮眠で大切なのは、睡眠段階2に入ること。そして睡眠段階3以上の深い眠りにいたる前に起きることです」(林教授)

 睡眠段階3や4に達すると、アラームなどで目覚めた際に、覚醒への切り替えがうまくいかない「睡眠慣性」が強く働き、体がだるくなるのだという。

 逆に、睡眠段階1の時点で仮眠を終えた場合、パフォーマンス改善の効果はほとんど見られない。「仮眠は目を閉じるだけでも意味がある」と言われることがあるが、それは誤りだ。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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