「このまま死を待つ」フィリピン人の“ゆるやかな自殺”に怒り 途上国のため奔走する日本人起業家

2021/11/18 08:00

とくしま・ゆたか/1978年生まれ、京都府出身。43歳(写真=写真部・東川哲也)
とくしま・ゆたか/1978年生まれ、京都府出身。43歳(写真=写真部・東川哲也)

 短期集中連載「起業は巡る」の第2シリーズがスタート。今回登場するのは、フィリピンで安価な義足作りに奔走する社会起業家、「インスタリム」の徳島泰(43)。AERA 2021年11月22日号の記事の1回目。

【写真】インスタリムが開発した義足がこちら

*  *  *

 東京・神田にあるシェアオフィス「axle(アクスル)御茶ノ水」。アクスルとは車輪をつなぐ軸のこと。元は「トヨタお茶の水寮」だった施設で、トヨタグループがベンチャー企業と出合う場として2020年、シェアオフィスに改装した。

 日本のものづくりを代表するトヨタゆかりのこの場所で、数人の若者がものづくりの常識をひっくり返す挑戦をしている。

「同じものを大量に作れば安くなる」。大量生産・大量消費を支えてきた常識だ。最近は消費者の好みが多様化し、企業は多品種少量生産に軸足を移してきた。だが、大量生産に比べればコストが上がる。

 地下1階に陣取った彼らがIoT(モノとインターネットをつなぐ技術)を駆使して挑んでいるのは、特注品を大量に生産してコストを下げる「マスカスタマイゼーション」。作っているのは途上国向けの義足だ。

 AI(人工知能)や3Dプリンターといった最先端の技術を使いこなし、50万円程度だった義足の価格を約4万円に下げた。21年はフィリピンで400足を売り、生産規模はまもなく10倍になる。それでも、1足、1足がそれぞれの患者に合わせた特注品だ。

■インフラが全くない

 この挑戦は、1人の若者の「怒り」から始まった。

 徳島泰(43)は13年、青年海外協力隊の一員としてフィリピンの離島にいた。工業デザイナーとして培った技術で現地の産業振興に貢献したい。熱い気持ちで現地に入った。

 ところが、赴任した田舎町には、ものづくりのインフラが全くない。仕事は農業や漁業が中心で、ものづくりといってもココナツの殻を彫った民芸品くらい。素材も部品もまともに手に入らず、識字率の低いこの地に、日本のノウハウを移植できる可能性はゼロに近かった。

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