King&Princeの神宮寺勇太さんが、初の単独主演舞台、そして初のストレートプレイで、三島由紀夫の『近代能楽集』に挑む。ハードルの高い挑戦だからこそ、やりがいがあるという。AERA 2021年11月15日号から。

【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾ったKing&Princeはこちら

*  *  *

――「近代能楽集」は、三島由紀夫が能にインスパイアされ、現代劇として描いた戯曲集だ。8編ある中から『葵上』『弱法師』の2編に挑む。いずれも人の心の奥底に潜む欲望、嫉妬や情念、欺瞞(ぎまん)などを生々しく描く。

神宮寺:2019年にミュージカル「DREAMBOYS」で(主人公のライバル)チャンプ役をやった頃から、いつかストレートプレイもやってみたいと思っていました。こんなに早いタイミングでやらせていただけるとは思っていなかったので、ビックリでしたし、めちゃくちゃうれしかったですね。

 最初、不安はなかったです。というのも、勉強不足で三島由紀夫さんを知らなかったんですよ。すぐに調べて、これは一筋縄ではいかないぞと、やっと理解しました。

■寄り添う役作りは無理

神宮寺:今は本読みを終えて『葵上』の立ち稽古中ですが、まさに一筋縄ではいかない物語だと思います。嫉妬という感情を描くにしても、表層的ではなく、人間の深層にある無自覚な欲望をえぐり出す感じで、初のストレートプレイがこれか、と(笑)。『弱法師』は、とんでもないせりふ量で、3ページほぼ一人で喋るシーンを覚えたばかりです。仕事から帰ったあと台本と格闘していますが、夜中は頭に入りにくいんですよ。あまりこういうことは言わないタイプだけど、毎日が怖いです。余裕がない日々を過ごしています。

――源氏物語を原典にした『葵上』では美貌のプレイボーイ・若林光を、『弱法師』では戦火で視力を失った二十歳の青年・俊徳を演じる。どちらも「役に寄り添う」役作りはできなかった。

神宮寺:光は結婚しているのですが、そもそも妻のことは全然愛してなくて、最近は病気がちで入院してしまったことも「あ~、めんどくさい女だなぁ」と思っている。そこにかつての恋人だった六条さんが現れて感情が揺れるのですが、どちらに対してもぞっとするような冷たい感情しかない、嫌な男ですね。

次のページ