また、九州大学は今年5月、アプリ「Q‐Mental APP」を無料配信し、学生が日々の食欲、睡眠時間、運動、気分を記録したり、メンタルヘルスの簡易診断を受けられたりするようにした。 

九州大学が開発した学生用メンタルヘルスアプリ。日々の健康状態や気分を簡単に記録できる。見やすく使いやすいデザインが特徴だ(photo 編集部・深澤友紀)
九州大学が開発した学生用メンタルヘルスアプリ。日々の健康状態や気分を簡単に記録できる。見やすく使いやすいデザインが特徴だ(photo 編集部・深澤友紀)

 診察が必要な状態なのに、「お金がない」「保険証を使って親に知られるのが嫌」と病院に行かない学生もいる。大学健康管理部門では無料で健康相談ができるが、そうした情報を知らずにいる学生も少なくない。そこで相談先も掲載し、地図アプリと連動して最寄りの医療機関が表示されるようにした。現在800人が利用している。 

 開発したのは精神科医で九州大学キャンパスライフ・健康支援センターの梶谷康介准教授。大学生の自殺に危機感を抱き、5年前に開発に着手した。 

「10代後半と20代の死因トップは自殺で、精神疾患の多くが25歳以下で発病するにもかかわらず、メンタルヘルスについて医療機関に相談しない学生が多いのです。関心を持つきっかけを作りたいと思いました」 

 学内の芸術工学研究院の教授や学生にデザインを、サイバーセキュリティセンターにプログラム監修を依頼した。研究費が底をつき、開発を断念しようかと思っていたところ、大学執行部からアプリを活用したいと相談があり、完成にこぎつけた。 

「毎日の状態や気分を記録し、あとから見返す『感情の自己評価』は、メンタルヘルスを改善します。相談先を変更すれば、ほかの大学でも使用可能です」 

 9月30日に緊急事態宣言が解除され、対面授業を再開する大学も増えた。だが、友人がいないため大学に居場所がないと感じる学生も少なくない。今後も支援策を続けることが必要だ。(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年10月25日号