RSウイルス感染症は、初期の症状だけでは新型コロナウイルス感染症との鑑別が難しい。RSウイルスの流行で小児医療が逼迫したのは、重症化の恐れのある子どもが入院してきただけでなく、どちらに感染しているのかわからない子どもが多数いて、PCR検査で調べる間、個室に入院させるなどの対応が必要だったのも一因だ。

「今年の冬、RSウイルス感染症のようにインフルエンザが大流行しないといいのですが」

 勝田准教授は懸念する。インフルエンザもやはり昨年、まったく流行しなかったので、免疫を持たない子どもが大勢いると考えられる。子どもがインフルエンザになると、肺炎などのほか、頻度は低いものの脳症になる恐れもある。

■5歳以上に承認申請へ

 インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も、持病がなく重症化リスクの低い子どもでも一定の頻度で重症化する。全体的には死亡率や重症化率が低くても、感染者の絶対数が増えれば一定数の子どもは重症化する恐れがあるので、どちらも感染を増やさないことが重要だ。

 子どもの新型コロナウイルスへの感染場所は一貫して家庭が最も多い。生活を共にする家庭内の感染は、特に子どもが小さい場合には完全に防ぐのは難しい。大人が家庭内に感染を持ち込まないようワクチンを打ったり、家庭外での行動に注意したりするのが一番の予防策だ。

 一方、子ども自身の感染や重症化を防ぐ一つの方法はワクチン接種だ。米CDCによると、デルタ株がまん延している今年6月20日~7月31日の間に新型コロナウイルス感染症で入院した12~17歳の子どもを分析した結果、ワクチン未接種の子の入院率はワクチン接種を完了した子の約10倍だった。

 国内では現在、12歳以上は接種ができる。米ファイザーは近く5歳以上についても特例承認を申請するとみられている。

「ワクチンの効果と副反応への懸念のどちらがお子さんにとって大きいかをかかりつけ医とよく相談し、接種するかどうかを決めてください。その際、地域の流行状況も一つの指標です。流行していなければ感染機会が少ないので接種の必要性は低いでしょうが、近所で毎週のように学級閉鎖が起きているようなら、効果がより大きいと思います」(勝田准教授)

(医療ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年10月4日号