AERA 2021年10月4日号より
AERA 2021年10月4日号より

 ただし、重症化率には変化はなかったという。デルタ株が流行する前の2020年3月1日~21年6月19日に入院した3116人と、今年6月20日~7月31日に入院した164人を比較したところ、集中治療室(ICU)での治療が必要になるなど重症化する子どもの割合には、統計的に有意な差がなかった。

■小児病床逼迫の理由

 米国内の9月22日現在の17歳以下の死亡は555人だ。死亡率は約0.01%で、他の年代に比べて低いままだ。国内では9月14日現在、19歳以下の感染者数は24万5705人で、死亡率は約0.0008%と低い。

 米CDCによると、子どもの重症化のリスク要因についてはまだ不確かなところが多いものの、これまでのデータからは、0歳児や、遺伝性疾患や神経疾患、代謝疾患、先天性心臓疾患のある子どもは重症化しやすい可能性があるという。また、成人同様、肥満や糖尿病、喘息、慢性的な肺疾患もリスク要因だ。免疫抑制状態にある子どもも重症化の恐れがあるという。

 小児の医療体制は、崩壊する恐れはないのだろうか。

「関東地方の小児救急医療体制はこの夏、非常に逼迫していました。理由は新型コロナウイルスの第5波だけではありません。今夏までは子どもの感染者が成人に比べて少なかったので、小児用の病床の一部を成人の感染者の受け入れに使っていたところが少なくありませんでした。そこに、子どものRSウイルス感染症の大流行があり、小児病床はまったく余裕がなくなりました」(勝田准教授)

 RSウイルス感染症は新型コロナウイルス同様、呼吸器感染症だ。1歳までに50~70%、2歳までにはほぼ全員が1度は感染する。鼻水やくしゃみ、せきなど呼吸器の症状が出る。初めて感染した時、特に1歳以下で初めて感染した時に最も重症化しやすい。感染研によると、初感染の子どもの2~3割に気管支炎や肺炎が起きるという。3歳以降になっても再感染するが、ほとんど重症化はしない。

 昨年はRSウイルス感染症がほとんど報告されなかった。それが今年に入り、沖縄や九州地方を皮切りに、少しずつ流行地域が動きながら、全国的にかつてないほど大流行した。しかも例年は少ない2歳児の感染が増加傾向にあった。

■インフルエンザの免疫

 RSウイルスの感染予防策は新型コロナウイルスと同じなので、昨年はコロナ対策を徹底させたために、RSウイルスがほとんど流行しなかったとみられる。その結果、本来なら2歳までに1度は感染して免疫がついているはずの子どもたちに免疫がつかず、今年の大流行につながった可能性が高い。

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