大島史子(おおしま・ふみこ)/1982年、東京都生まれ。イラストレーター、漫画家。韓国映画にハマり、独学で韓国語を習得。10月にアジュマブックスから2冊目の翻訳本『根のないフェミニズム』が出版予定(撮影/写真部・張溢文)
大島史子(おおしま・ふみこ)/1982年、東京都生まれ。イラストレーター、漫画家。韓国映画にハマり、独学で韓国語を習得。10月にアジュマブックスから2冊目の翻訳本『根のないフェミニズム』が出版予定(撮影/写真部・張溢文)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【stay home中にオススメの韓国文学一挙紹介!】

 フェミニズム出版社「アジュマブックス」から、『ハヨンガ ハーイ、おこづかいデートしない?』が刊行された。主人公のトン・ジスは、同僚キ・ファヨンのセックス動画が、アダルトサイトにアップされていることを知る。そのサイトは、女性を侮辱する動画や画像であふれていた。やがて自警団「メドゥーサ」が立ち上がり、ジスもキ・ファヨンを助けるべく、サイトを閉鎖に追い込む闘いに加わり…というストーリーだ。「ハヨンガ」とは、韓国で男性が女性を誘うときに使う「ハーイ、おこづかいデートしない?」の意味。日本語訳を手がけた大島史子さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *

 作家の北原みのりさんは「シスターフッドの声を届けたい」と、フェミニズム出版社「アジュマブックス」を立ち上げ、韓国の書籍『ハヨンガ』を日本で出版するための翻訳者を探していた。女性問題に詳しく、韓国のネットスラングが分かる人に訳してほしいと、フェミニストの友人で、韓国語もできる大島史子さん(39)に白羽の矢が立った。大島さんは言う。

「実は翻訳はやったことがなかったのですが、読み始めたら面白くて止まらなくなって。すぐに北原さんに『訳したいです』と連絡しました」

 本書は韓国で実際にあった女性たちの闘いをもとにしたドキュメンタリー小説。韓国の国内最大のアダルトサイト「ソラネット」には、女性をレイプする協力者を募集したり、隠し撮りした女性のセックス動画がアップされたり、性暴力、性犯罪の温床となっていた。ソラネットに怒ったフェミニストグループ「メドゥーサ」が闘いを挑み、閉鎖に追い込む勝利の物語だ。

 大島さんが翻訳をするときに頭を悩ませたのが、日本語の「女言葉」だった。韓国語では基本的に男女が同じ言葉を話し、忠実に訳すと女性が話しているようにならない。

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