本展の魅力は「レイン」だけにとどまらない。科学的な事実に徹底的にこだわり、かつストーリー性とドラマを楽しみながら「恐竜が生きていた」ことを体感してもらうための工夫が満載なのだ。

 では会場の入り口から、6600万年前の世界へと旅してみよう。

 まず本展のテーマである「ララミディア大陸」が映像で紹介される。ララミディアとは約45億年前の地球誕生後、恐竜がもっとも栄えた約1億年前から6600万年前にかけて現在の北米大陸に存在した大陸だ。

 次の「発見ラボラトリー」はララミディアの気候がどのようなものだったのか、そこでどんな恐竜たちが生きていたのかを知るゾーン。クスノキの葉やセコイアの実の化石、数々の恐竜たちの化石から、その場所の様子がリアルになっていく。

 解説は極力簡潔に大きな文字で記され、子どもにも読みやすい。ティラノサウルスに襲われ、その歯を食い込ませたまま化石化した植物食恐竜エドモントサウルスの骨に、子どもたちが真剣に見入っていた。

■世界初の脳腫瘍の痕跡

 ゾーン中央に展示されたティラノサウルス科のゴルゴサウルス「ルース」は、世界で初めて脳腫瘍の痕跡が確認された恐竜だ。平衡感覚を失っていたのか、あちこちに骨折や骨の湾曲がある。田中は言う。

「痛々しいですが、それでも力強く生き抜いた証しでもある。恐竜にも生き物としての生涯や個性があると感じてほしい」

 続く「フィールドツアー~少年トリケラトプスの冒険~」のゾーンが秀逸だ。壁面を「タタタタ……」と幼いトリケラトプスの影が走っていく。大人も思わず追いかけてしまうほどの愛らしさに導かれて進むと、その先で小さなトリケラトプスの骨格がいまにも跳び上がりそうなポーズを取っている。翼竜に気を取られ、群れからはぐれて一人冒険に出る小さな恐竜のストーリーが、躍動感ある骨格標本で描写されていく。

 水辺でワニに襲われそうになったり、仲間を見つけて駆け出したり。この少年トリケラトプスの骨格は、レインの骨格の分析データやCTスキャンなどをもとに最新技術で生み出された。そして「白亜紀体験シアター」で風と地響きとともに最先端の研究に基づく迫力の映像を体感すれば、その先に奇跡のレインと圧巻のスタンが待っている。

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