世界一美しいトリケラトプスの実物化石「レイン」。巨大な頭部と角が、いまにもこちらに迫ってくるような迫力だ(撮影/家老芳美)
世界一美しいトリケラトプスの実物化石「レイン」。巨大な頭部と角が、いまにもこちらに迫ってくるような迫力だ(撮影/家老芳美)
バラバラのパーツに分かれた化石を専門スタッフが慎重に並べていく。化石にはすべて番号が振られている(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
バラバラのパーツに分かれた化石を専門スタッフが慎重に並べていく。化石にはすべて番号が振られている(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

「パシフィコ横浜」で開催中の「DinoScience 恐竜科学博」。日本初上陸の奇跡の化石「レイン」のほか、最新の科学とエンターテインメントの融合が大人をも魅了する。AERA2021年8月16日-8月23日合併号の記事を紹介する。

【写真】バラバラのパーツに分かれた化石を専門スタッフが慎重に並べていく様子

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 子どもも大人も、そこにいる全員が息をのんでその恐竜を見つめていた。横浜市「パシフィコ横浜」で開催中(9月12日まで)の「DinoScience 恐竜科学博」。メインホールに展示されたトリケラトプス「レイン」の周囲には静かな熱気が漂っていた。

「レイン」はアメリカ・ヒューストン自然科学博物館が所蔵する実物の全身骨格化石だ。全長7メートル×高さ3メートル。これまで発見されたトリケラトプスの化石のなかで最も完璧な骨格を持ち、かつ大型の皮膚痕までもが保存された状態で見つかった。本物が放つオーラはたしかに他を圧倒する。

「正真正銘、人類が目にした最高のトリケラトプスです。僕のようにずっと恐竜化石を見てきた人間でも鳥肌が立ちました」

 そう話すのは、本展を企画・監修した「恐竜くん」こと田中真士(39)だ。カナダ・アルバータ大学で古生物学を学び、サイエンスと人をつなぐサイエンスコミュニケーターとして活動している。レインを発掘したアメリカのブラックヒルズ地質学研究所(BHI)所長ピーター・ラーソン(69)と長年の親交があり、その信頼関係がレインを来日に導いた。

「生き物が化石になって残る確率はものすごく低い。6600万年前に生きていたレインがその体の80%以上を残す化石となり、さらに皮膚まで残っているのはまさに奇跡です。実際に見ていただくと意外に“コロン”としていて、おそらくみなさんが想像するよりも、かわいらしい生き物に感じると思います」

■6600万年前への旅

 レインと向かい合う最強の肉食恐竜ティラノサウルス「スタン」にも注目だ。いまにもレインに襲いかかりそうな迫力あるポージングは、BHIと田中が、重心の移動や関節の動きなどを3カ月かけてコンピューターでシミュレーションし、作り上げた。

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