ゼブラ サラサドライ/超速乾ドライジェルが特徴で、書いてもすぐ乾く。インクは赤・青・黒の3色あり、芯の太さも3種類。いずれも税込み165円(撮影/井上有紀子)
ゼブラ サラサドライ/超速乾ドライジェルが特徴で、書いてもすぐ乾く。インクは赤・青・黒の3色あり、芯の太さも3種類。いずれも税込み165円(撮影/井上有紀子)

 ニーズは限られるけど、消費者の心をがっちりつかんで、ヒット商品を生み出す人たちがいます。共通するのは、ひたすら物事を掘り下げる姿勢でした。AERA 2021年8月2日号から。

【写真】汗を拭うのに最強なのは手ぬぐい!

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 ニッチな分野でも消費者の心をつかむことができれば、市場が開ける。そんな商品を数多く手がけるのが、小林製薬だ。

 最近のヒット作は「メンズケシミン」シリーズ。男性用のシミ対策クリームだ。シミが目立つようになる40代以降をターゲットに売り出したところ、異例の人気を博している。

 2014年に売り出した当初は、女性用とほぼ同じ成分だった。だが研究員には引っかかりがあった。ブランドマネージャーの奥井彩さん(32)が当時の様子を説明してくれた。

「同年代でも男性のシミの方が目立って濃いイメージがありました。女性と男性のシミは、何かが違うんじゃないか。この疑問を解明したほうがいいと、研究が始まりました」

 まず様々な年齢の男女100人ずつの顔写真を机に並べた。すると、30代までの男性は「シミがあるかも」くらいなのに、40代以上は「どう見てもシミ」が目立つ。大きさや濃さを計測して、40代を境に濃く、大きくなる傾向がわかった。さらにシミの原因とされる酵素「プラスミン」を量ると、男性は女性の1.7倍もあった。19年にリニューアルしたメンズケシミンには、プラスミンの働きを抑えるトラネキサム酸を配合した。

「男性は女性に比べて日焼け止めを塗らない人が多く、ごしごし洗って、ひげもそります。日焼けや摩擦が刺激となり、プラスミンが活性化していると考えました。シミという悩みを顕在化することで、スキンケアをしていなかった人に関心を持ってもらいました」(奥井さん)

■左利きから「神」扱い

 予期せぬヒットを記録した商品もある。

 筆記具大手ゼブラが16年に売り出した「サラサドライ」は、SNSで「左利きにとっての神ボールペン」の異名を持つ。左手で文字を書くとインクが手についてしまうが、速乾性のジェルインクを使ったこのボールペンなら、手が汚れにくい。

 初年度に100万本売れればヒットと言われる業界で、発売2年で600万本も売れたという。開発した門脇裕幸さん(47)は言う。

「忙しいビジネスパーソンがターゲットでした。インクがしっかり出るのに、書いて2秒で乾く。手帳やレシートのようなつるつるした紙質にも走り書きできる。左利き用を狙ったわけではないけど、いままでの製品の欠点をカバーできました」

(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年8月2日号より抜粋