不健康になりがちな漫画家の健康管理を版元がサポートする。そんなサービスを出版大手の講談社が導入した。この動きは広がるだろうか。AERA 2021年7月19日号で取り上げた。
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1時間でアイデアが浮かぶときもあれば、考えがまとまらずに数日が経過することも。気がつけば何時間も机の前に座り続け、果ては痔(じ)や腰痛に悩まされて……。
「漫画家さんとの雑談では、肩が痛いとかどこのマッサージがいいとか、そんな話がほとんどですよ」
そう説明するのは、講談社・クリエイターズラボの鈴木綾一部長(40)。これまで週刊少年マガジンやヤングマガジンの編集者として多くの漫画家と向き合ってきた。漫画家は職業柄、どうしても座る時間が長くなる。作品以外に話題にのぼるのは、決まって「健康」だった。
■運動よりも体を酷使
読者が求める絵柄のクオリティーは上がる一方だ。その分、作画にかける手間も増えている。働き方は人それぞれだが、締め切り前は無理をしなければいけないこともある。そんな時に体調不良を感じても、時間を捻出できずに一人悩むケースもあるという。鈴木さんはこう話す。
「同じ姿勢で居続けるのは、運動よりも体を酷使していることがあります。編集者は医師ではないので、適切なアドバイスができないという課題がありました。具合が悪いと感じた時に、すぐに誰かに相談できる環境があればいいなと思ったんです」
そんな思いから、講談社のコミック事業局は5月、産業保健支援サービスを手がけるメドピアグループと提携。漫画家1千人とそのアシスタント、家族らを対象にしたオンライン健康相談「first call(ファースト コール)」を導入した。
仕組みは簡単だ。不調を感じたら、まずスマートフォンやパソコンでファーストコールのサイトを開く。内科や眼科、精神科など12の相談科目から該当する項目を選び、症状を書き込んだり、けがの状態を写した写真を添付したりすることもできる。チャットなら24時間相談可能。早くて即日、遅くても翌日には返事がくる。1度の相談で2回まで追加で質問でき、詳しく話したい人は15分間テレビ電話をつなぐこともできる。鈴木さんは言う。