電車で過呼吸、暗い部屋で「死にたい」…漫画家を襲った適応障害のリアル 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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電車で過呼吸、暗い部屋で「死にたい」…漫画家を襲った適応障害のリアル

井上有紀子AERA
乃樹愛(のきあ)/1994年生まれ。埼玉県出身。漫画家。2019年に『なんで私が適応障害? 暗闇の中で光を見つけた私。』でデビュー

乃樹愛(のきあ)/1994年生まれ。埼玉県出身。漫画家。2019年に『なんで私が適応障害? 暗闇の中で光を見つけた私。』でデビュー

illustration 合同出版提供

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 入社2カ月後に適応障害の診断を受けた漫画家の乃樹愛さん。会社にも親にも病気のことを受け入れてもらえなかったが、ツイッターの同志が救いとなった。AERA 2021年7月19日号から。

【乃樹愛さんの漫画はこちら】

*  *  *
 乃樹愛(のきあ)さんは、大手学習塾に入社して教室長を目指していた。だが、研修初日、担当社員の言葉に衝撃を受けた。

「隣の同期はライバルだから、なれ合わなくていい」「あなたたちは自分と闘ってください」

 これは「パフォーマンスだ」という同期もいたけど、乃樹愛さんにはそうは思えなかった。

「この人たちは本気で、私がダメなら、クビにできるんだ」

 配られたマニュアルは、電話帳のような分厚さ。毎日テストがあり、成績順に席を並べ替えさせられた。頑張らなきゃ、テストでビリになる。週6日、午前6時に起きて、午後11時に帰宅する生活が始まった。

「退職届をお守り代わりに持ち歩いていました」

 なんでもないのに涙が出て、止まらないようになった。

「涙をふけば会社に行ける。でも、入社1カ月後の朝、電車で過呼吸になりました。これは、おかしいって思いました」

 とりあえず精神科を受診。様子を見ることになった。現場研修の受け入れ先が決まり、一人暮らしも始まった。もう愚痴る同期も家族もいない。

 その2週間後には配属が決まって、またすぐに引っ越し。目まぐるしさに気力がなくなった。

 でも、職場では200%の力を注いだので、反動で、家では抜け殻に。暗い部屋で、「死にたい」と思った。

 入社2カ月後に、適応障害の診断を受け、休職することにした。

 会社は「メンタル不調は珍しくない」というが、問題意識を持ってくれなかった。

「私がだめでも他の人がいると思っていたのかもしれません」

 小学生の頃から男子と共に野球チームにいた。中学校では生徒会長もして、外交的だった。

「だから、周りは病気を理解はしても受け入れるのは難しいようでした」

 母は「みんなは働けるのに、どうしてあんたにはできないの」と言った。

 でも、ツイッターに救われた。適応障害のことだけをつぶやくアカウントを作成。そこには「わかるよ」と反応してくれる同志がいた。彼は「病気のせいで乃樹愛のせいじゃないよ」って言ってくれた。

 規則正しく生活して、だんだんご飯を食べられるようになった。休職の半年後、退職し、気づいたら、普通に電車に乗れるようになっていた。(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年7月19日号


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