


十分休んだはずなのに、疲労感が抜けない──。梅雨から夏にかけてのこの時期、小さな「不調」は積もりがちだ。サインを見逃さず、効果的にメンテナンスしよう。AERA 2021年6月28日号は「デトックス」特集。
* * *
「なぜか一日中頭がボーッとしたり、体がだるかったり。でも健診では特に悪いところは見つからないので、一体どうすればいいのやら……」
ため息をつくのは、都内の出版社に勤務する男性(42)だ。ここ数年、梅雨の時期になると体に“異変”が起きるという。
平日は朝7時に起床するが、この時期はなかなかベッドから起き上がることができない。起床から4~5時間ほどすると激しい睡魔が襲ってくる。打ち合わせの場所へ向かう電車では、ほんの2、3駅でも眠ってしまう。週末は昼過ぎまでベッドでうずくまっている。
「何をしてもすぐに疲れて、集中力がもたない。周りから『やる気がない』と思われている気がして、つらいです」(男性)
蒸し蒸しジメジメするこの季節、体のだるさを訴える人は多い。ウーマンウェルネス研究会が首都圏に住む20~50代の男女609人を対象に実施した調査(2019年)では、全体の57.3%が梅雨時期に何らかの不調を感じており、女性の場合、その割合は66.6%にものぼる。
埼玉県在住の事務職の女性(45)も「いつもとは疲れ方が違う」と話す。
「梅雨になると決まって肩こりがひどくなるんです。細かい文字を長時間見るのは慣れっこですが、この時期はすぐに目が疲れてしまいます」
■脳の熱中症が起こる
なぜ梅雨は、いつも以上に疲れを感じるのだろうか。疲労研究に詳しい東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身医師(59)はその原因をこう説明する。
「いわゆる梅雨バテや夏バテの主な原因は“脳の熱中症”です。例えば、長時間入浴するとのぼせることがありますが、それは脳の熱中症の初期症状。脳の自律神経が熱を持ったままの状態だと、機能が低下するだけでなく、睡眠の質が悪化し、疲労の回復が妨げられてしまうことがわかっています」
一般に、疲労は身体的なダメージだと想像しがちだ。だが、梶本医師によると、実は疲労は肉体の酷使が原因ではないのだという。
「疲労の原因は、自律神経、すなわち脳へのダメージです。仕事やストレスがかかる時や運動時も、自律神経中枢が最も疲れるんです。つまり、すべての疲労の原因は脳にあります」
梶本医師は、疲労と自律神経のメカニズムをこう解説する。