自律神経はいわば「脳の司令塔」。24時間休みなく、心臓の拍動や血圧、呼吸、体温、唾液、消化活動、覚醒と睡眠などを調整している。自律神経中枢は脳の視床下部と前帯状回にあり、活動性を高める「交感神経」と休息や睡眠に導く「副交感神経」のバランスを細かく制御して、脳と体を維持している。運動時や厳しい環境では、脳から各器官への指令が増えて複雑になり、自律神経が酷使され、疲弊する。これが疲労の正体だ。
だが、自律神経機能は加齢とともに下がる。20歳のときと比較した場合、40歳は2分の1、60歳では4分の1まで低下する。多くの人が30代半ばを過ぎると急に疲れを自覚するようになるのはこのためだ。
中高年になっても若いころのような働き方や運動を続けていると、気づかぬうちに自律神経の中枢が疲弊し、脳疲労がたまってしまう。そして、この脳疲労が信号として前頭眼窩野(ぜんとうがんかや)という場所に送られ、“身体的な疲労感”に変換されるという。
「つまり、私たちが普段感じている『体が疲れた』という感覚は、実際は『脳の自律神経が疲れた』という信号を、自分自身でごまかすことによって引き起こされているんです」
脳疲労をセルフチェックするリストを用意した(下記)。一つでも思い当たることがあれば脳疲労が蓄積している可能性がある。
疲労は、睡眠中に脳を休め、回復するのが基本だ。
実は、脳はパソコンのように常に発熱しており、酷使するほど熱が上がる。脳疲労の回復は、脳の熱を冷やすことが最善策だという。
「気温や湿度の高い今の時期に倦怠感がある理由は、暑さなど体温調節に自律神経が酷使され、脳温度が上昇しているから。最も有効な方法は、脳の自律神経の中枢を冷却することです」
冷やす方法はシンプルだ。自律神経の中枢は鼻腔のちょうど真上にあるため、冷たい空気を鼻から吸い込むことにより、効果的に冷却できる。
「鼻は脳の冷却装置。鼻が詰まるとボーッとするのは脳温度が上がるからです。自律神経中枢を冷やすには、鼻から冷たい空気を吸うのが、最も効果的です」
おでこに冷却ジェルを貼るなどしても、自律神経の中枢を冷やすことはできないという。
28度はエコじゃない
梶本医師は夏季の睡眠にこう注意喚起する。