「男でも女でもない」井手上漠が見つめる境界線の先の自由

2021/06/21 11:30

――マイノリティーであると自覚したのは、小学5年生のときだ。体育の授業で体操着に着替えるときに、突然、男女別々の部屋に分けられるようになった。周りが性差で区別される環境に変わったことで、いつの間にか「あの子は普通じゃない」と思われるようになっていた。

井手上:女か、男か、どちらかを選ばなきゃいけない葛藤はすごくありました。だけど、それ以上に人から「変わってる」と思われることが、すごく怖かった。実際に「気持ち悪い」と言われてすごく傷ついたこともあります。その頃は「どうやったら受け入れてもらえるんだろう」「どうすれば自分のことを好きになってもらえるんだろう」ということばかり考えていました。

■身体の性別は関係ない

――著書の中で性自認を「LGBTQで言えば“Q”のクエスチョニング(Questioning)。つまり自分自身の性や好きになる対象の性が定まっていないし、わからない」と表現するのがいちばん近いと書いた。一方で、「クエスチョニングの自分でさえ、ずっと続いていくかはわからない」という。

井手上:今でこそ、身体は男性だけど、美的感覚、恋愛対象に性別は関係ないと、具体的に言葉にすることができるようになりました。だけど、当時は普通の男の子になることも、女の子として生きていくこともできなくて、孤独感でいっぱいで、将来に全く希望は持てませんでした。

――大きな転機が訪れたのは、中学2年生のときだ。

井手上:学校から帰って夕食後に、母から真剣なまなざしで「話がある」と切り出され、「漠は男の子が好きなの?」と聞かれたんです。その言葉に母の覚悟を感じました。震えるほど恐怖感もあったんですけど、同時に「やっと本当の気持ちを話せる」という安堵感もありました。

 正直に伝えた自分に、母は「漠は漠のままでいい」と言ってくれました。今回のエッセイを書くときに、過去の出来事を思い出すのが正直すごくつらかったんですけど、同時に改めてお母さんの偉大さを感じました。あのとききつく言われたことも、全部愛情だったんだなって。

 それからは無敵になりました。

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