人気や名声、周囲の評価に溺れることなく、ぶれることなく、「迷ったら、ライブをやって」ロックンローラーの肉体性という原点に回帰して、ハートランド、ホーボー・キング・バンド、コヨーテ・バンドとこの40年間ビジョンを共有してきた音楽仲間たちと自分を奮い立たせるのだ。そんな魂のロッカーと血と汗と涙、数々の困難と奇蹟の時を共有してきた元春リスナーズ。アーティストとリスナーを結ぶ熱い絆といったら、世界でも右に出るのは、あのニュージャージーのボス、ブルース・スプリングスティーンとそのファンたちぐらいだろうか。

 間近にせまる、日本武道館と大阪城ホール・ライブ。ディラン経由、ビート経由で彼と出会った年長ファンとしては、あの“くよくよしたって、なにも始まらない”と歌うフォークロック新曲「朽ちたスズラン」が聴けるだろうか、と胸がどきどきだ。英語タイトルは「レッツ・フォーゲット」? いやいや、忘れるものか、毅然とした眼差しで広くまた深く、時代を見つめてきたその表情、その歌……新しい時代のカーテンが上がろうとしている。ハロー、サニー・デイ、こんにちわ、レヴォルーション……。(文/室矢憲治)

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