「議事堂襲撃事件はショッキングだったけど、驚きはなかった」

 1月6日に何かが起きる、という告知がネットのあちこちにあり「1月6日、内戦」と印刷されたTシャツが製作されていたのをSNSを通じて多くの人が知っていたからと彼女は言う。

「トランプが今回の暴力を扇動したことは間違いない。敗北を認めることができず自滅していく彼は、襲撃を見て楽しんでいたはず。そうでなければ州兵の助けを大至急要請したはず」

 地元のヘッドハンティング専門企業で働くワーウィックさんは、昨年1月に北部のミシガン州からジョージア州に引っ越してきた。

「今の勤務先に入社した時、同僚たちの机にTRUMPのシールが貼ってあるのを見て驚いた。私が育ったミシガン州では職場で政治の話はタブー。でも、ジョージアではトランプ支持の旗やサインが至る所に貼ってあった」

 そんな職場の同僚も、前述の決選投票では「もうトランプを支持する候補には投票できない」と語り、民主党候補に投票した。筋金入りの共和党支持州民が最後のタイミングでトランプ氏を見限ったのに彼女は驚いた。

「議事堂に突入した暴徒の多くが白人男性だった。彼らはトランプと同じで、自分たちには特権がある、何をしても許されると信じている。ノーという結果を受け止められない。彼らが最も恐れているのは有色人種のパワーが増して自らの地位が脅かされること」

 コロナ禍で自宅勤務になった5月以降、BLMのデモがジョージアでも起きた。平和的に行進していた参加者たちが警察に逮捕されたことを知った彼女は、アトランタ刑務所の前で行われたBLM支援の集会に参加した。

「私は白人女性で、黒人男性たちが受けてきたような差別を個人的に経験したことはない。ならば、その“特権”を人種差別をなくすために有効に使わなければと思った」

 と、ワーウィックさん。議事堂襲撃事件で露呈した白人の横暴さを、徹底監視する義務も白人の自らが負うと語る。

「議事堂を襲撃した白人男性たちの怒りは、決してあの場だけの一過性のものではないと思う。自宅に帰った彼らが、子どもや妻に怒りをぶつけていると想像すると怖い。彼らの目を覚まさせるには、教育が必須だと思う」

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