「これから来年度の予算を作る時期ですが、ふるさと納税がこれ以上伸びてほしくないというのが正直な気持ちです」(税務部税制課)

 自治体間での温度差について、ニッセイ基礎研究所の高岡和佳子主任研究員はこう話す。

「特産品の有無による自治体間の不公平感は理解できますが、それを言い出すと『観光スポットの多い沖縄はGo Toトラベルの恩恵が大きくて不公平だ』『飲食店の多い東京都で他地域よりGo Toイートが使いやすいのは問題だ』などの意見が出始め、収拾がつかなくなります」

■12月末までに駆け込み

 経済政策では何がいけないかを議論するのは簡単だが、何をすべきかを決めるのは難しい。第一生命経済研究所首席エコノミストの野英生さんも言う。

「現状では公平性より地域の産業保護が重要です。農家や漁業者に現金を配っても需要不足という根本的な問題は解決せず、食材は余ったままで、肝心な次の生産活動に結び付きません。コロナ禍で需要が消滅した状態が2~3年続けば、地域の特産品は次々と消滅していきます。一時的に返礼品が上乗せされる程度なら問題ないでしょう」

 ふるさと納税の今年分の申請は12月末まで。食べて応援する意味で、納得できる寄付先を探すのも悪くはない。(ジャーナリスト・大場宏明、編集部・中島晶子)

AERA 2020年12月21日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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