※写真はイメージ(gettyimages)
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AERA 2020年12月21日号より
AERA 2020年12月21日号より

 コロナ禍による全国的なイベントや宴会の中止で危機的な状況にある生産者。そんな生産者らを救うための生産者支援事業にふるさと納税が用いられたことで、通常の倍量や半額といった返礼品が出回っているという。AERA 2020年12月21日号では、例年以上にお得な「ふるさと納税」について取材した。

【一覧表】ふるさと納税「緊急支援品」をチェックする

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 ふるさと納税の年末駆け込み需要が高まるなか、「緊急支援品」「コロナ対策支援」といった言葉が目につくようになった。増量、または値引きされた返礼品が並び、2倍量や半額といったものもある。ふるさと納税総合サイトのふるさとチョイスでは「ニコニコエール品」と銘打った期間限定プロジェクトを7月22日に開始。同サイトで“ニコニコエール”と検索すると81件(12月10日時点)の“お得な”返礼品が並んでいる。

■農水省の救済措置利用

 ふるさと納税は、自治体への寄付のうち2千円を超える部分が所得税や住民税の控除対象になる制度。故郷や被災地など応援したい自治体に寄付できる利点があるが、人気の理由は寄付先の自治体から送られる返礼品だ。近年は返礼品の過当競争が問題視され、総務省は昨年6月に返礼品の調達費を寄付額の3割以下とする規制を設けた。

 それがなぜ、「半額」「2倍量」にできるのか。背景には農林水産省による生産者支援事業がある。コロナ禍で打撃を受ける生産者の救済措置として、生産者からの仕入れ代金の最大半額を国が補助する。総務省が規制するのは自治体の「持ち出し」分であり、自治体の負担はそのまま、豪華な返礼品を用意できる。苦しい財政状況の中、肉や魚介類、米などの特産品のある自治体は年末商戦さながらの熱気で寄付を募っている。

 一方で、これといった特産品がない自治体では「返礼品は寄付額3割以下」の規制が骨抜きになることに危機感がある。

 川崎市(神奈川県)は今年度、ふるさと納税による市税の減収が63億円に達する見込みだ。保育園の運営費なら園児3800人分、ごみ収集・処理なら36万世帯分に相当する。税収の不足分は減債基金からの借り入れなど「やりくり」でしのぎ、住民サービス低下は今のところ回避しているという。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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