冬は夜が長く、空気が乾燥して空が澄み天体観測にうってつけの季節。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、満天の星を求めて遠方に旅行するのは気が進まないというなら、自宅や職場のそばから夜空を見上げてみてはどうだろう。

 旅先での星空は天気に左右され、運悪く見えない場合もあるが、身近な星空観測なら思い立ったらすぐに実行できるし、屋外だから3密も回避して楽しめる。それに、初心者は満天の空よりも目立つ星しか見えない都会の方が星座を見つけやすい。

 大阪を代表する繁華街、心斎橋から徒歩15分ほどの場所でも、毎晩のように天体観望会を開いている人がいる。「星カフェSPICA」オーナーのkeisukeさんだ。

「都会では星が見えないという思い込みを捨てて夜空を見上げれば、だんだんと星が見えてくるんですよ」

 ポイントはしばらく見続けることだという。都心で夜空を見上げたときは「やっぱりここでは星は見えない」とあきらめがちだが、実はしばらく見ているうちに、目が夜空の暗さに慣れ、見える星がだんだん増えてくる。「暗順応」と呼ばれる視覚の調整機能だ。すぐ諦めず待つことが重要なのだ。

 keisukeさんは大阪に生まれ育ち、自身も街中で星が見えるとは思ってもいなかったという。20歳の頃奈良の山中で星座を見た翌日に街中で夜空を見上げたら、はくちょう座やさそり座が見えてきた。その感動をみんなにも知ってもらいたいと、大阪市内に店を開き、店内のプラネタリウムでその日午後8時の星空を映して解説した後、ビルの屋上に移動して天体観望会を行っている。

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年12月21日号より抜粋