昨年11月開業の「渋谷スクランブルスクエア」屋上からは夜景と月や星の競演を楽しめる(写真:佐々木勇太さん提供)
昨年11月開業の「渋谷スクランブルスクエア」屋上からは夜景と月や星の競演を楽しめる(写真:佐々木勇太さん提供)

 遊びに行くのも、人に会うのもはばかられる今冬。遠出しなくても、家を出て空を見上げてみよう。夜景と星の競演や、狭い空を渡る星々。街中ならではの星空の味わい方をご紹介します。AERA 2020年12月21日号に掲載された記事を紹介する。

【写真特集】都会でも楽しめる冬の天体観測

*  *  *

 東京・六本木の「六本木ヒルズ森タワー」。52階で屋上スカイデッキへのエレベーターに乗り換え、さらに階段を上がる。海抜270メートルのスカイデッキに立つと、360度の眺望に宝石箱のような夜景がきらめき、開けた頭上には艶やかな十三夜の月が静座している。これまで人工的な明かりは天体観測を妨げると思っていたが、星空と夜景をいっぺんに味わう贅沢な楽しみ方もあるのだ。

 東京のど真ん中ともいえる六本木で、定期的に星や月を見るイベントが開かれている。その名も「六本木天文クラブ」。国立天文台や各大学で天文学を専攻する研究者らが星空案内をしてくれる。取材に訪れたこの日は、「十三夜を愛でる会」が開かれていた。

「十五夜は東アジアの広い地域で行われている行事ですが、十三夜は日本だけのオリジナル。まん丸でないところが風流だという日本人の感情もあわせて楽しんでください。月の左には火星も見えていますね」

 星空案内人(星のソムリエ)の資格を持つ泉水朋寛さんが、来場者に向けて語りかける。

■日常の中にある非日常

 星を見るなら「明かりの少ない郊外」というイメージだが、なぜ都心で星空のイベントを開くのか。泉水さんはこう説明する。

「都会では星が見えないと思い込んでいる方は多いですが、明るい星はもちろん、流れ星も見えるんですよ。多くの方に日常の中の非日常をご体感いただきたいと思っています」

 六本木天文クラブのイベントにときどき参加するという東京都目黒区に住む伊藤典子さん(51)は、自宅のベランダからも星を眺めるそうで、

「都内でも思う以上に、特に深夜はたくさんの星が見えるんです。気持ちが塞ぐことがあっても星を見上げれば気持ちが癒やされていきます」

次のページ