コロナ禍での感染不安や働き方の変化が、例年激戦が繰り広げられてきた「保活」に変化をもたらしているようだ(撮影/大野洋介)
コロナ禍での感染不安や働き方の変化が、例年激戦が繰り広げられてきた「保活」に変化をもたらしているようだ(撮影/大野洋介)

 子どもを保育園に入れるための“保活”が、コロナ禍で様変わりしている。園の見学やママ友の情報入手がままならず、親たちは自分に合った園を見つけることに苦戦している。AERA 2020年12月21日号で掲載された記事から。

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「もっと、出産前に保育園の見学を済ませておけば」

 都内に暮らす学校職員の女性(42)は、2021年度の保育園の申し込みを終えたいまも、そんな気持ちがぬぐえない。

 昨年12月に第1子を出産。産後3カ月が過ぎ、少しずつ保育園の見学を、と考え始めた頃、新型コロナウイルスの流行が本格化し、緊急事態宣言が発令された。

 女性が暮らす区で認可保育園の見学が再開されたのは7月。自宅近くの認可保育園に電話をすると、見学は1家族1人、1日5人までだと言われた。体温を測り、マスクをして見学に向かう。園のなかに入ることはできず、窓の外からお昼寝中の子どもたちの様子をのぞいたり、園庭で園長の話を聞いたり。わずか10分で“見学”は終わった。

「実際に保育士が子どもたちと接しているところを見ることはできませんでした。何より、夫と二人で見学し意見を共有することができないのがつらかった」

 外からのぞくだけの見学はあまり意味がないのかもしれない。積極的に保活をする気持ちもうせた。最終的に見学した認可保育園は3カ所。入園の申請を行ううえで、基準となったのは「自宅からの距離」だけだった。

■ママ友情報が入らない

 コロナ禍での初めての子育て。「仕事への思い」も薄れてきているように感じる。学校職員という仕事柄、完全にテレワークで作業することは難しい。自分が毎日電車に乗り通勤することで、ウイルスを家庭に持ち込んでしまったら……。乳幼児の感染や重症化の例は少ないと言われているが、区のホームページには、認可園で保育士の感染が確認された、という情報が日々アップされている。

「子どもが感染し、後遺症などが出る可能性もゼロではない。リスクを冒してまで働く意味はあるのでしょうか」

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