バイデン氏は閣僚候補らと会見を行った/11月24日、米デラウェア州ウィルミントン(写真:The Washington Post via gettyimages)
バイデン氏は閣僚候補らと会見を行った/11月24日、米デラウェア州ウィルミントン(写真:The Washington Post via gettyimages)
AERA 2020年12月21日号より
AERA 2020年12月21日号より

 リベラル派市民の期待を背負い、次々と大物政治家や官僚を閣僚に投入するバイデン次期米大統領だが、民主党をまとめきれるのか、波乱の船出だ。AERA 2020年12月21日号の記事を紹介する。

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「財務長官は、ジャネット・イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長を指名する見通しだ」というニュースが11月30日(米東部時間)に流れると、株価が上昇した。財務長官としては女性初。FRB議長のほか、過去には大統領経済諮問委員会(CEA)委員長も務めたため、財務長官に就任すれば、初の経済主要ポスト「三冠王」となる。

 さらにCEA委員長には、プリンストン大学公共政策・国際関係大学院長のセシリア・ラウズ氏、行政管理予算局(OMB)局長に民主党政策スタッフのニーラ・タンデン氏が指名され、経済チーム3主要ポストが、初めて全員女性となった。

■上院で過半数がカギ

 初の女性チームは、バイデン・ホワイトハウスでもう一つ誕生する。ホワイトハウス上級広報チームで、大統領報道官のジェン・サキ元国務省報道官をはじめ、ホワイトハウス広報部長と副大統領報道官の3人全員が女性だ。

 また、国土安全保障長官にアレハンドロ・マヨルカス氏が、初の中南米系移民出身として指名された。国防長官には黒人のロイド・オースティン氏を指名し、人種的マイノリティーが重要ポストに抜擢(ばってき)される。

 しかし、バイデン移行チームが、ウケを狙って彼らを起用しているわけではない。女性とマイノリティーを起用しながらも、専門分野に極めて強い政策の職人、テクノクラート揃(ぞろ)いなのだ。それは現在国民の20人に1人が感染した新型コロナウイルスによる経済危機と雇用の崩壊を、コロナ前の軌道に戻していく闘いに向けた布陣なのである。

 ところが、テクノクラートの精鋭を集めても、上院において民主党が過半数を取れるかどうかが、バイデン新政権が直面する大きな問題となる。今のところ、100議席のうち共和党が50議席、民主党が48議席を獲得している。残った2議席は、来年1月5日に行われる、ジョージア州の改選議席と補欠をめぐる決選投票にかかっている。

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