「高等教育無償化プロジェクトFREE」は、高等教育の学費や奨学金制度の改善を目指し、2018年に発足した。約20大学の学生が参加している (c)朝日新聞社
「高等教育無償化プロジェクトFREE」は、高等教育の学費や奨学金制度の改善を目指し、2018年に発足した。約20大学の学生が参加している (c)朝日新聞社
AERA 2020年12月14日号より
AERA 2020年12月14日号より

 コロナ禍の減収が教育費も圧迫している。苦境に喘ぐ親と学生たちの悲痛な叫びは、高等教育費の負担を家計に押し付けてきたこの国の根本の問題を照らし出す。AERA 2020年12月14日号から。

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 政府は5月、コロナで学びの継続に支障が生じる学生の救済のため「学生支援緊急給付金」を創設、住民税非課税世帯の学生に20万円、それ以外で条件を満たす学生に10万円を給付した。4月からは「高等教育修学支援制度」で、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生を対象に授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給が始まっている。

 だが、中京大学の大内裕和教授はこれらの制度で救われるのは「ごく一部の世帯」と指摘する。

「政府は修学支援制度を『大学無償化』などと喧伝(けんでん)していますが、減免対象は年収目安が4人家族で380万円未満です。これは全学生の1割程度に過ぎず、『無償化』には程遠い。緊急給付金も同じく全体の約1割にしか恩恵がなく、コロナ禍に苦しむ多くの学生には支援が届いていません」

 現在、4年制大学での奨学金利用者の割合は約半数で、2割程度だった1996年から倍増した。親が学費を負担できない中間層の家庭が相当数あり、コロナ禍でも放置されているのだ。

 今夏、全国の奨学金情報から条件に合うものを検索できるサービス「Crono My奨学金」を始めた高瀛龍(こういんろん)さんもこう話す。

「最も多い登録ユーザーは、年収500万~600万円で子どもが多い世帯です。この中間層がいま一番苦しい思いをしています」

 全国大学生活協同組合連合会 理事の矢間裕大(やざまゆうだい)さんによれば、11月から実施中のアンケートには、こんな声も届いている。

「コロナ禍で親の収入が激減。10月に募集のあった給付型奨学金を申請しようとしたが、審査基準が前年度の年収なので諦めた。今困っている人が利用できる制度にしてほしい」

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