この日は2018年のセ・リーグ最優秀中継ぎ投手、近藤一樹(37、前ヤクルト、37)も参加。加藤脩平(21、前巨人)を空振り三振、飛雄馬(29、前DeNA)を右飛、中村和希を空振り三振に仕留めてアピールした。

 インターネットテレビで中継を見守ったヤクルトファンの女性(25)は、「まだまだ投げられると思う。スワローズからいなくなってしまうのはさみしいけれど、ぜひ再契約を勝ち取ってほしい」と期待した。

■帰ってきた「新庄劇場」

 また、この日最も注目を集めたのが2006年に引退して以来のプロ復帰を目指す新庄剛志(48)。守備では一塁、二塁、三塁、センターを守り、守備機会はなかったもののシートノックやボール回しでは軽快な動きを見せた。

 その一挙手一投足を多くの記者が追いかける。新庄が記者席から見えにくい位置に移動すると、離れた場所にいるカメラマンに無線を使って「いま、新庄さん何してる?」逐一と確認する記者もいた。

 なかでも、記者席がざわめいたのがシート打撃の4打席目。日隈ジュリアス(23、前ヤクルト)からレフト前ヒットを放つと「マジかよ」という驚きの声が方々から上がった。

 新庄はトライアウト後の取材で、「打席に立ったときに“うわ! 野球やってる”っていう気持ちになれたね。この1年間は自分に勝てた気がする。こんなに野球の練習したことなかったから」と話した。

■新庄「申し訳ない」の真意

 また、レフト前へのタイムリーについては「ランナーがいてくれて、アドレナリンが出てボールがよく見えた。止まってたんじゃないかというくらい」としつつ、こう反省した。

「申し訳なかったのは、タイムリー打った後に手を上げてしまったこと。ピッチャーの方に本当に申し訳ない」

 戦力外通告を受ける選手の再挑戦の機会を均等化するためにに始まった合同トライアウト。例年50~70人程度の選手が参加するが、再びプロ野球選手としてグラウンドに立てるのはごくわずかだ。かつては10人を超える選手がプロ再契約を勝ち取った年もあったが、ここ数年は2~3人程度にとどまる。果たして、今年は何人の選手が再びプロ球団のユニフォームに袖を通せるか。(編集部・川口穣)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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