トライアウトで注目を集めた新庄剛志(撮影/写真部・加藤夏子)
トライアウトで注目を集めた新庄剛志(撮影/写真部・加藤夏子)
新庄剛志。48歳とは思えない(撮影/写真部・加藤夏子)
新庄剛志。48歳とは思えない(撮影/写真部・加藤夏子)

 打球音やグラブにボールが吸い込まれる音、投手が投球時に漏らす声、そして「パパ頑張って!」という子どもの声援がいつも以上に大きく響く――。

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 今オフに戦力外通告を受けた選手や現役復帰を目指す選手らが参加するプロ野球12球団合同トライアウトが7日、神宮球場で行われ、投手33選手、野手24選手の計57名が参加した。

 合同トライアウトは例年、プロ野球ファンにも公開され、数千人の観客が詰めかける。応援する選手のプロ復帰を願いながらも、どこか「引退試合」のような雰囲気に包まれることもあった。一方、今年は新型コロナウイルスの影響で非公開。球場近くに集まるファンの姿も見られたが、スタンドからはスカウトや家族ら関係者と報道陣だけが見守るなかでの開催となった。

 例年とは全く違う雰囲気のなかで猛アピールしたのが、北海道日本ハムファイターズを自由契約になった左腕・宮台康平(25)だ。この日は堀内汰門(24、前ソフトバンク)、小山翔平(24、前巨人)、中村和希(25、前楽天)と対戦し、三者三振に切って取った(投球はいずれも1ボール1ストライクから開始)。

■慣れ親しんだ球場で奮起

 宮台は東京大学出身選手として松家卓弘(横浜、日本ハム)以来13年ぶりにドラフト指名を受け、18年に日本ハム入団。19年には2軍で4勝を挙げたものの、今シーズンは2軍で防御率7.71と苦戦し、戦力外となった。

 この日会場となった神宮球場は、宮台が大学時代に慣れ親しんだ球場だ。記者は東京六大学時代の宮台を神宮で観戦したことがあるが、そのころの躍動感あふれるフォームとマウンドさばきをよく覚えている。

 学生時代の最速は150キロ。この日の最速は144キロにとどまったが、のびのびとした投げっぷりはそのままで、低めにコントロールされた直球の球威はバックネット裏2階の記者席から見ても充分に伝わってきた。変化球も圧巻だった。堀内に対しては130キロのチェンジアップ、中村に対しては外へ逃げる低めのスライダーを振らせ、いずれも空振り三振。宮台は自身のアピールポイントに「140キロ台中盤のストレートと、チェンジアップ、スライダーのコンビネーション」を挙げるが、その強みを存分にアピールしたマウンドだった。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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新庄のプレーに記者席ざわめき