今は、失業給付とパートで働く妻の給与で何とか払っているが、失業給付は年内で切れる。一刻も早く仕事に就きたいと思い、同じハイヤーの職を探すが、求人はゼロだという。

「懸命に働いてきたのに。まさかという思いです」(男性)

 収入減でも、家族の未来を守るために削りたくない費用もある。千葉県の会社員女性(42)の場合、それは保育園に通う子どもたちの習いごとだ。

 5年前に一戸建てを3500万円で購入した。35年ローンは会社員の夫(43)が組み、月10万円近く支払っているが、夫の会社の業績悪化で給与は月5万円減った。夫は「心配ない」と言うが、会社の業績が回復する保証はない。毎月の支払いには不安しかない。住宅ローンと教育費のために、女性は「本や服、身のまわりのものをネットで売ろうと思っている」という。(取材・文/住宅ジャーナリスト・榊淳司、編集部・野村昌二)

AERA 2020年12月14日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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