「書くなら、いまだ」加藤シゲアキが“恐れながら”も最初で最後の恋愛小説を書いた理由 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「書くなら、いまだ」加藤シゲアキが“恐れながら”も最初で最後の恋愛小説を書いた理由

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古谷ゆう子AERA#読書
※写真はイメージ(gettyimages)

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 最新小説『オルタネート』を発表した加藤シゲアキ。これまで避けていたという恋愛小説を書くことにした理由を語った。AERA 2020年12月7日号に掲載された記事を紹介する。

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 加藤シゲアキの最新小説『オルタネート』(新潮社)は、高校を舞台にした群像劇だ。部活に没頭し、恋をすることを知った高校生たちの特有の心理をみずみずしくも重厚感のある筆致で描く。高校生たちの姿を描こうと考えたのはなぜなのか。

加藤シゲアキ(以下、加藤):「書くなら、いまだ」と思ったんです。小説を書き始めた20代前半はとくに、若い方に応援していただくことも多く、高校生たちを主人公に描くということはどこか読者に媚びていると思われるんじゃないか、という気持ちもありました。

 そもそも僕自身、恋愛小説をあまり読んでこなかったので、読んでいないものは書けないんですよね。書いたとしても、僕の身近な世界を反映させていると思われるのが嫌で、意識的に避けていた部分もあります。でも30歳を過ぎ、抵抗がなくなったのは、「作家」として自信がついたからなのかもしれません。読者の方に信頼してもらえるようになったという感覚がどこかにあって、それならまだ扱ったことのないテーマに挑戦してみよう、恋愛小説を書いてみても面白いかな、と思ったんです。

 それに、このまま放っておくと自分の高校時代と距離ができ、記憶も薄れていってしまう。“最初で最後の恋愛小説”という気持ちで書きました。作家として積み重ねてきた時間と30代という年齢を考えると、いまだからこそ書ける作品かな、と。

■物語に躍動してほしい

 物語には、高校生専用のアプリ「オルタネート」が当たり前のように存在する。さらに人と人との相性を遺伝子レベルで解析する機能「ジーンマッチ」により人間関係が数値化されていく。

加藤:マッチングアプリという賛否あるものをテーマにしたい、と考えたのは「物語に躍動してほしい」と思ったからです。そうしたものがないと、さわやかなだけの恋愛小説になってしまう。それは僕には書けないし、筆が止まるな、と。登場人物たちが何かを頼っていたり、何かから逃げようとしたりしているほうが、リアルな人間が描けるようになる。SNSが生活のすべてになっている、ということは現代では決して珍しくないですよね。


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