スマホの移動情報などを加味したグーグルの感染者数予測に注目が集まった。数字を意識することで警戒感などが生まれた結果、抑止につながることも考えられる(撮影/写真部・高野楓菜)
スマホの移動情報などを加味したグーグルの感染者数予測に注目が集まった。数字を意識することで警戒感などが生まれた結果、抑止につながることも考えられる(撮影/写真部・高野楓菜)
横田勲(よこた・いさお)/1987年生まれ、東京都出身。京都府立医科大学大学院助教を経て、現在は北海道大学大学院医学研究院医学統計学准教授(写真/本人提供)
横田勲(よこた・いさお)/1987年生まれ、東京都出身。京都府立医科大学大学院助教を経て、現在は北海道大学大学院医学研究院医学統計学准教授(写真/本人提供)
グーグル「COVID-19感染予測(日本版)」 https://datastudio.google.com/s/nXbF2P6La2M
グーグル「COVID-19感染予測(日本版)」 https://datastudio.google.com/s/nXbF2P6La2M

 自治体などが連日発表する陽性者数は「これまで」を把握するのに必要だ。しかし、グーグルが公表したのは「これから」の数値。予測には、意義がある。AERA 2020年12月7日号から。

【写真】グーグルによる新型コロナ感染予測サイト(日本版)はこちら

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 11月15日~12月12日の28日間の累計で、新型コロナによる全国の死亡者は512人、陽性者は5万3321人に上る──。ショッキングに感じる人もいるかもしれないが、連日のように過去最多を更新する今の感染状況を踏まえれば、「あり得るかも」と受け止めるべきなのかもしれない。

 これは米グーグルが11月17日の公開初日に示した、感染症の数理モデルとAI(人工知能)を組み合わせた新型コロナの感染予測情報だ。

 ちなみに、11月26日時点の予測は11月24日~12月21日の28日間の累計で、全国の死亡者は758人、陽性者は6万4167人とさらに膨らんでいる。

 グーグルによる感染予測情報の日本版は、米国に続いて世界で2番目という。米国で公開しているのは予測開始日から14日間の陽性者数や死亡者数、入院患者数などの累計予測値だが、日本版は「より長期の予測データを求める声に応じる形」(グーグル広報部)で28日間に設定。予測値は都道府県ごとに日々更新されている。誰でも無料で閲覧可能だ。

 日本版を監修した慶應義塾大学の宮田裕章教授(42)が最も留意したのは「日本の実態を高い精度で捉えられているか」という点だったと言う。

「分析の仕方は米国のモデルと同じですが、日本国内のデータに基づいて日本独自のアルゴリズムで作っているため米国と日本のAIは別物です。それでも適切な予測ができるか検証する必要がありました」

■移動情報の把握が強み

 世界に冠たるグーグルが提供するサービスだけに、政府も高い関心を示す。

「厚生労働省で関係者から予測の前提条件などについて聞くことになっている」

 加藤勝信官房長官は11月18日の会見で、政府として関係者から予測の前提条件を聞き取る方針を示した。

 たしかに気になるのは予測の精度だ。AIと膨大な疫学的データを組み合わせ、時系列の予測を行う上で重要なのは、データの選択と信頼性だろう。

 グーグルは厚労省が発表している陽性者数や死亡者数、病床に関するデータのほか、地理情報、国民の健康や医療に関する各種統計、国勢調査の結果などの国内データを挙げている。ポイントはグーグルが独自に集めた人の移動に関する情報を加味している点だと指摘するのは、医学統計に詳しい北海道大学大学院の横田勲准教授(33)だ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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