一般公開の日、母親のシンシン(右)に引っ張られるシャンシャン/2017年12月19日 (c)朝日新聞社
一般公開の日、母親のシンシン(右)に引っ張られるシャンシャン/2017年12月19日 (c)朝日新聞社
3歳を過ぎて成獣に近い大きさに。元気にササを食べる/2020年6月23日 (c)朝日新聞社
3歳を過ぎて成獣に近い大きさに。元気にササを食べる/2020年6月23日 (c)朝日新聞社
一般公開の前日、報道陣に初お披露目/2017年12月18日 (c)朝日新聞社
一般公開の前日、報道陣に初お披露目/2017年12月18日 (c)朝日新聞社

 2017年に生まれた東京・上野動物園のジャイアントパンダ、シャンシャンが中国に渡る日が近づいている。上野で過ごした3年あまりの日々を、福田豊園長に振り返ってもらった。AERA2020年11月23日号の記事を紹介する。

【写真】3歳を過ぎると成獣に近い大きさに

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 中国と東京都の協議で決めたシャンシャンの返還期限は12月31日。パンダは中国から有償で貸与され、生まれた子どもの所有権は中国にある。シャンシャンは今年6月に3歳になった。本来は「2歳で返す」とされているが、今夏に東京五輪が予定されていたこともあり延長された。コロナの影響で渡航日の見通しが立たないが、11月下旬には決まる予定だという。

 シャンシャンの帰国はこれ以上、遅らせられません。メスなので、早ければ3歳半で繁殖期を迎えます。中国には500頭以上が飼育されており、お婿さんの候補がたくさんいます。教育プログラムもあり、成長過程ごとに経験させることが決まっているんです。上野動物園でも経験を増やすようにしていますが、敷地が狭く、子どもが1頭のみという制約もある。経験値が限られると、繁殖の適齢期になった時に影響が出かねません。

■心配ぶりは我が子以上

 上野のパンダは人工授精に頼らざるを得ない状況だったが、シャンシャンは初めて自然繁殖で生まれた。これまでに上野で生まれたパンダは計5頭。順調に大きくなったのは1988年誕生のユウユウ以来、29年ぶり。

 世界中の動物園でパンダの繁殖が試みられていますが、自然繁殖で生まれた子どもが成長した事例は多くありません。シャンシャンが誕生した日、「ギャー、ギャー、ギャー」という甲高い声が産室に響き渡りました。無事に生まれてくれて一安心したものの、無事に育ってくれるか、ヒヤヒヤドキドキしながら見ていました。120キロの母親に潰されないよう、産室にビデオカメラを設置して子どもの位置を30分おきに確認し、日誌は分刻みで記録しました。母親はきちんと面倒を見ているか、母乳はちゃんと飲めているかといった点をよく見ておかないと、子どもにとって命取りになるんです。心配ぶりは我が子以上だったかもしれません。ただ、私たちが神経質になると動物にも伝わる。だから、飼育係には「気持ちに余裕をもってやろう」と言っていました。

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