■ストレス軽減するには

 どのようにすればストレスを軽減できるのか。研究で効果が裏付けられた方法を100個紹介した『図解ストレス解消大全』の著者で、明治大学法学部の堀田秀吾教授はこう言う。

「科学的に証明された不安やイライラを消す方法はたくさんありますが、その多くは、『脳をだますこと』に集約されます」

 例えば、米ハーバード大学の研究では背筋をピンと伸ばすと、ストレスホルモンである「コルチゾール」が低下することがわかった。これは「脳をだます」メカニズムだ。

「脳は常に体からの情報を待っていて、『寒い』『痛い』などと判断します。背筋を伸ばしたり、スキップしたりすると、脳は『いま元気なんだ』とだまされる。作り笑顔でも『楽しいんだな』と脳が錯覚します」(堀田さん)

 笑顔の効果については、米カンザス大学のタラ・クラフト氏らの研究がある。ストレスを感じる作業を行った後、箸を横にくわえて口角を上げたグループは、笑顔にならないくわえ方をしたグループよりストレス度合いや心拍数が下がっていた。

 笑いと健康を研究する東京家政大学の大西淳之教授は言う。

「目の周りの眼輪筋(がんりんきん)と口角を上げる大頬骨筋(だいきょうこつきん)が動くと、実際に楽しいかどうかにかかわらず、楽しく笑っているときと同じような脳の状態になります。さらにゲラゲラ笑うと、糖尿病患者の食後血糖値の上昇が抑えられるなど、病気で損なわれた機能を適正化する効果が確認されています。声を出して笑うときには短く息をたくさん吐くので、副交感神経が優位になり、ストレスが和らぐとも考えられます」

 脳をだます方法として「気をそらす」というテクニックも各種あり、堀田さんのおすすめは「おでこをタッピング」だ。米ニューヨーク市聖路加病院のウェイル氏らの実験では、おでこをトントントンと30秒間指でたたくことを4回繰り返したところ食欲を抑えられた。ほかの研究で、タッピングに不安解消の効果があるというメタ解析もある。

「脳のリソースは限られているので、別のことを考えたり、体や指を動かしたりして気をそらすことは有効です」(堀田さん)

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