それとともに、公明党の人が創価学会の話をするようになってきた。創価学会の人も、政治の話をストレートにするようになりました。それまでは、公明党の会合に行くと創価学会のことは言わない。池田大作氏のことは言わない。政教分離を徹底するんだっていうのがありました。実は、政教分離というのは、国家が特定の宗教を優遇したり忌避したりすることを禁じるもので、宗教の側から政治に関与することは構わないんだけれども、創価学会も、言論問題以降、過剰に抑制しているところがあった。それがオープンになってきたっていうのも面白いなと。

澤田:確固たる宗教を持たない一般的日本人からすると、宗教とは既にでき上がっているもので、教義も今から変わるものではないと感じがちなのですが、今のお話を伺うと、いまだに変わり続けて、発展して変化していこうという意思が内側にある。面白いですね。

佐藤:面白いと思います。変わらないために変わるというところがあるわけですよね。この本の最後は会憲でまとめたんですけれど、その意味において、この会憲で創価学会は宗教として完成したと僕は見てるんですよ。

澤田:私、最初に面白いと思った歴史小説ってヘンリク・シェンキェヴィチの『クォ・ヴァディス』なんです。宗教が人間の歴史の中で変化していって、今につながっていくという点が、読んでいてすごく面白かったんですけれど、そういった視点でもこの『池田大作研究』を読みました。まさにキリスト教がずっとやってきたことが、第2次世界大戦中から今までの間に、ぐっとまとまって、この一冊に詰まっている。人間の歴史は幾度も幾度も同じことが重なっていくものです。だからこの先も、またどういうふうに変わっていくのかなと思いました。創価学会は完成したとおっしゃいましたけれど、キリスト教だって、いつでも改革はあります。

佐藤:それは変わっていきます。一つのベースができて、その土俵の上で変わっていくということです。

(構成/編集部・木村恵子)

佐藤優(さとう・まさる)/作家・元外務省主任分析官。『創価学会と平和主義』『危機の正体』『ウイルスと内向の時代』『世界宗教の条件とは何か』など著書多数。2020年の菊池寛賞を受賞。

澤田瞳子(さわだ・とうこ)/作家。2010年、『孤鷹の天』でデビュー。『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。『若冲』『火定』『落花』『能楽ものがたり 稚児桜』で4度の直木賞候補に。

AERA 2020年11月16日号より抜粋