「大阪都構想」の住民投票は公明が賛成、自民が反対というねじれの構図となった。公明を引き入れてまで実現を目指す維新の真の狙いは、大看板の復帰にある。都構想の裏側に迫ったAERA 2020年11月2日号の記事を紹介する。
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そもそも論になるが、維新はなぜこれほどまでに「大阪都構想」実現にこだわるのだろうか。
大阪市南東部のベッドタウンである大阪2区を地盤とする立憲民主党の尾辻かな子衆議院議員は、住民投票で賛成が多数を占めたあと、大阪市が四つの特別区に再編された状態を「現在の大阪市民にとっては、一番おいしいあんこの部分のない饅頭と同じだ」と話す。
「権限も財源も全部、大阪府にとられてしまう。福祉、防災、教育といった生活に不可欠な政策が自分たちの手で決定できなくなる。大阪府は当然、270万の大阪市民ではなく、880万の大阪府民の目線で物事を考える。旧大阪市だけを特別扱いはしないですよ。大阪が力をつけた一番の力の源である大阪市を解体することが、なぜ大阪全体の得になるのか、全く理解できないのです」
そもそも「大阪都構想」という呼び名も不正確だ。住民投票で賛成多数になっても大阪府が大阪都になるわけではない。また、維新が訴える府と市の「二重行政」「無駄の削減」についても、当の松井一郎・大阪市長が8月31日、自身のツイッターで「大阪府と大阪市の二重行政はありません」と断言している。
ならばなぜ今、再びの住民投票なのか。
維新関係者の間には、ある待望論がある。1回目の住民投票の否決の責任をとり政界を引退した橋下徹氏の復帰だ。日本維新の会の関係者は、こう意気込む。
「この住民投票は、日本維新の会という政党の政治生命がかかっている。ここで勝てば、橋下氏の国政復帰の可能性もある。本人は否定しているが、次期衆院選挙で橋下氏をかつぐことができれば、維新の知名度は、本当の意味で全国区となる。議席が今以上に増えれば、国政においても自民党は、維新を無視できなくなるのは間違いないだろう」
松井大阪市長は否決されれば「政治家終了」と明言しており、さすがに3度目はないだろう。立憲民主と共産は自民と同様に反対の立場で住民投票に臨む。次期衆議院選挙を見据えてか、関西出身の山本太郎・れいわ新選組代表も反対の立場で連日、街頭演説を行っており、結果は国政の勢力図にも影響する。
さまざまな思惑が交錯する住民投票まで、残り1週間。大阪の有権者はどのような審判を下すのだろうか。(編集部・中原一歩)
※AERA 2020年11月2日号より抜粋