学校の給食は、毎日飲み物が選べるようになっています。水、牛乳、チョコレート牛乳、オレンジジュースの4種類から選ぶそうで、それを知ったときは「そんなん4歳の子どもに任せたらチョコかジュース三昧になるに決まってるやろ!」と憤慨したのですが、どうやら娘の話では、水や牛乳を選ぶ日もあるそうなのです。選択肢があり、自分にその選択が任されると、案外子どもって賢明な判断をすることができるものなんだな──と考え込んでしまいました。

 娘の友だちと会うときも、親が「そろそろ遊びは止めておやつにするよ。クラッカーとバナナ、どっちにする?」などと子どもに選ばせる場面をよく目にします。それはスムーズに物事を運ばせるための戦略なのかもしれませんが(どっち?と訊くことで、子どもが「まだ遊びたい~」「アイスクリームが食べたい~」と駄々をこねる確率は低くなります)、些細な物事でも選択肢を与えてその選択を肯定することで、子どもの自己を確立させ、自己主張力を高める側面もあるように見えます。

 ということで、私はアメリカの教育法を「日々子どもに選択させ、その選択を否定しないことによって子どもの自己主張力を高めている」と見ているのですが、その自説をアメリカ人の夫に披露したところ、一刀両断されました。「アメリカ人はそんなことまで考えていないよ。単に、楽しく学ばせることに重きを置いているだけだ」

 それから話は、アメリカの教育がいかに「楽しさ」を重視しているか、そのメリットとデメリットについての、夫の独演会となりました。私はしみじみと思いました。成り立ちはどうあれ、アメリカ人ってほんとに自己主張が強いよな、と。日本人的穏便さで聞き役に回っていると、あっという間に会話の主導権を奪われてしまいます。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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