現代のアイヌの少年が触れた「近くて遠いアイヌの世界」 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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現代のアイヌの少年が触れた「近くて遠いアイヌの世界」

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坂口さゆりAERA
福永壮志(ふくなが・たけし)/1982年生まれ、北海道出身。2003年に渡米、映像制作を学ぶ。初長編「リベリアの白い血」(15年)がベルリン国際映画祭のパノラマ部門に出品され、ロサンゼルス映画祭で最優秀作品賞に輝くなど、世界的な注目を集める。19年から東京を拠点に活動(撮影/写真部・加藤夏子)

福永壮志(ふくなが・たけし)/1982年生まれ、北海道出身。2003年に渡米、映像制作を学ぶ。初長編「リベリアの白い血」(15年)がベルリン国際映画祭のパノラマ部門に出品され、ロサンゼルス映画祭で最優秀作品賞に輝くなど、世界的な注目を集める。19年から東京を拠点に活動(撮影/写真部・加藤夏子)

「アイヌモシリ」/主人公カントを演じる下倉幹人は、見る人を引きつける目力の持ち主。10月17日から全国順次公開 (c)AINU MOSIR LLC/Booster Project

「アイヌモシリ」/主人公カントを演じる下倉幹人は、見る人を引きつける目力の持ち主。10月17日から全国順次公開 (c)AINU MOSIR LLC/Booster Project

「リベリアの白い血」/発売元:ニコニコフィルム、販売元:オデッサ・エンタテインメント、定価3800円+税/DVD発売中 (c)2017 ニコニコフィルム

「リベリアの白い血」/発売元:ニコニコフィルム、販売元:オデッサ・エンタテインメント、定価3800円+税/DVD発売中 (c)2017 ニコニコフィルム

 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【写真】映画「アイヌモシリ」の場面写真はこちら
*  *  *
 北海道阿寒湖畔のアイヌ民芸品店を訪れた日本人観光客が、店主に言う。

「日本語上手ですね」

 映画「アイヌモシリ」に出てきた言葉に衝撃を受けた。福永壮志監督(38)にそう伝えると、

「あるあるエピソードです。その方に悪意はないだろうし、無知からきている失言だと思いますが、アイヌの人は森のどこかに集落があって固まって住んでいるとか、日常的にアイヌ語を話していると思っている人がいまだにいる。アイヌのことをよく知らない日本人は多いと感じています」

 実際そうだろう。北海道出身の福永監督にとっても子どもの頃、アイヌ民族は「謎に包まれた存在」で、どこか触れてはいけないことのように感じていたという。そんなモヤモヤした意識が変わったのは、2003年に渡米し、大学を卒業してからのことだ。

「地域差や個人差はありますが、米国人にはネイティブアメリカンの土地を奪って今があるといった歴史認識がある。僕自身そうした記事を読んだり話を聞いたりした時に、自分が生まれ育った北海道の先住民族であるアイヌを何も知らないできたことを恥ずかしく思った。その後、映画を勉強するようになって、いつかアイヌの映画を撮れたらと思うようになりました」

 主人公は14歳のカント。阿寒湖畔のアイヌコタン(村)で民芸品店を営む母親のエミと暮らしている。1年前に父親が亡くなってから、カントはアイヌの活動に参加することがなくなった。そんなカントをある日、父親の友人でアイヌコタンの中心的存在であるデボがキャンプに誘う。山で自給自足しながらカントにアイヌの精神や文化についてさりげなく語り伝え、デボはひそかに飼っていた子熊の世話をカントに託す。

 実はその子熊は長年途絶えていた「アイヌの熊送りの儀式=イオマンテ」の復活のために必要不可欠な神へのささげものだった……。


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