スミレナガハナダイは性転換する魚だ。「雌性先熟」という特徴を持ち、メスからオスに性転換する。小さい間はメスで子を残して、大きくなるとオスに性転換し、ハレム(一雄多雌の集団)を作ってメスを独占するのだという。

 また、軟体動物のアメフラシの場合は、雌雄同体で一つの個体が男性器も女性器も持っている。アメフラシは動きが遅く行動範囲も狭いので、少ない出会いで確実に子孫を残せるように、ということらしい。

「いろいろな性の仕組みがありますが、生き物によって生態や特徴が異なるので、それぞれの生き物が、子孫を残すために一番効率のいい方法を取っているんです」(飼育スタッフ)

■種と性の世界の多様性

 こうしたトークイベントやコンテンツは、会場に足を運べない人でもオンラインで楽しめる。「交尾」「おっぱい」などをトークテーマに、飼育スタッフが真面目な知識を熱く語るトークイベント(1千円)のほか、生き物の貴重な交尾・交接動画が見られる「デジタル袋とじ」(200円)も。

 コロナ禍での開催について、丸山館長がこう話す。

「状況に応じたディスタンスを保つことが必要な今だからこそ、人と生き物が近くにあることを感じたときに、その温かさや生きるためのパワーをより感じることが多くなったのではないでしょうか。種の多様性、性の世界の多様性を改めて感じてもらうことで、今ならではの投げかけができたら」

 性別のあり方から子育ての仕方まで、多様性にあふれる生き物たちの世界。「ダイバーシティー」を声高に叫ぶニンゲン界より、もしかしてずっと進んでる?(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年10月12日号