AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発 「森友」改ざんはなぜ?』は、自殺した財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんと、相澤冬樹さんによる「同時進行ドキュメント」。巻末には、赤木俊夫さんが遺した手記も収録している。著者の相澤冬樹さんに、同著に込めた思いを聞いた。
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記者歴33年。「取材は愛」と照れずに言う。
相澤冬樹さん(57)。元NHK記者で、その時から学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる、いわゆる「森友事件」を追い続けてきた。
「取材相手を愛して愛して愛し抜いて、あなたのためにとことん頑張ると信じてもらえた時に、相手も愛でもって返してくれます」
本書は、相澤さんと赤木雅子さん(49)の共著。森友事件の渦中、国有地売却に絡む公文書の改竄(かいざん)を命じられ従ってしまったことを悔やみ2018年3月に命を絶った財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)の妻が雅子さんだ。前半は雅子さんが俊夫さんの人生や、亡くなってからの悲しみ、怒り、葛藤を、後半は相澤さんが筆を引き取り、その後の雅子さんを追った。
「真実が知りたい」。本書を貫くのはこの一点だ。
「雅子さんは夫が亡くなった真相を知りたい、私は森友事件の真相を知りたい。私たちの願いは、そこに尽きます」
それにしても、相澤さんが雅子さんを動かしたのはなぜか。同年11月、財務省に不信感を募らせた雅子さんが、相澤さんにメールを送ったのが始まりだった。しかしその後は「山あり谷あり」、2人は親しくなったり反発したり。それでも雅子さんは、最後は相澤さんに俊夫さんが残した改竄の経緯が記された「手記」を託した。こうして20年3月、相澤さんは「週刊文春」に手記をスクープとして載せた。
「待つ姿勢がよかったと思います」と、相澤さんは振り返る。