「yumbo」澁谷浩次のソロは自らの洋楽体験のトレースを目指す (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「yumbo」澁谷浩次のソロは自らの洋楽体験のトレースを目指す

連載「岡村詩野の音楽日和」

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岡村詩野AERA
「yumbo」のライブ写真(一番右のピアノに向かっているのが澁谷さん 写真提供_7 e.p.)

「yumbo」のライブ写真(一番右のピアノに向かっているのが澁谷さん 写真提供_7 e.p.)

「yumbo」の最新作「鬼火」のジャケット写真(写真提供_7 e.p.)

「yumbo」の最新作「鬼火」のジャケット写真(写真提供_7 e.p.)

 仙台に澁谷浩次というアーティストがいる。東京を中心に回る音楽の現場とは距離をおきつつ、地に足をつけた活動をする優れたアーティストは少なくないが、とりわけ澁谷の作品には今の時代に多くの人が欲しているであろう歌と言葉が込められている。テレビやインターネットで派手にアピールするようなミュージシャンではない。どこのお店にも、どんな通販サイトにも、CDが置いてあるわけでもない。しかし、自分の手で「探し」、「見つける」こと、そしてようやく手にしたその作品を何度も聴いて体に染み込ませることの尊さを、彼の音楽や活動は教えてくれる。

【「yumbo」の最新作「鬼火」のジャケット写真はこちら】

 澁谷浩次は1970年、北海道に生まれる。仙台に暮らす現在、98年に結成した「yumbo(ユンボ)」というバンドのリーダーとして活動している。担当は、作詞作曲、ボーカル、ピアノ、ベースなど。ライブや作品の発表は決して多くないが、これまでに発表されたアルバム「小さな穴」(2003年)「明滅と反響」(06年)「これが現実だ」(11年)、そして目下の最新作「鬼火」(16年)は、いずれも高く評価され、時を超えてもなお多くの人の胸に届いている。特に「鬼火」は東日本大震災発生直後に澁谷らメンバーが避難していたブックカフェで録音された曲を含め、時間をかけて様々な環境で録音された2枚組の大作となった。

 澁谷は「yumbo」のステージでは決して前に出ず、隅の方で背中を丸めてピアノを弾く姿が印象的だ。そんな彼は10代の頃から「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」や「マヘル・シャラル・ハシュ・バズ」など独特な音世界を持つ国内外の音楽を聴いたり、吉増剛造や瀧口修造らの現代詩に親しんだりしながら育ったという。90年代半ばには、即興グループで活動する体験をしたこともあり、澁谷の曲は正確なリズムに縛られないタイム感の上で、しなやかな言葉と空中をたゆたうようなメロディーが丁寧につづられる。けれど、曲自体は親しみやすいものが多い。加えて「yumbo」メンバーにホルンやユーフォニアム担当がいて、歌の風景は彩り豊かだ。市場にあふれる大量生産された音楽には絶対にない、柔らかでヒューマンで、一人ひとりに語りかけるような眼差しがある一方、おいそれと妥協しない頑固さや凛々しさ、そして気品もある。


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