一体なぜそんな働き方・暮らし方を選ぶのか。

「会社に自由な働き方を認めてもらっている分、ハイレベルなアウトプットを出し続けないといけないと考えています。より良いものを作るためにも、家にこもるより、インスピレーションになるようなことに投資して、自分自身の血肉になる体験をしていきたいんです」

 とはいえ「ずっと漂っているのも疲れちゃう」ので、実家に戻ってしばらく落ち着く時期もありそう、と小林さん。ハフは使わない月は休会できる。

「“住む”ことに関してもっとグラデーションがあればいいと思っていました。暮らし方の選択肢が増えたことで、将来についても気が楽になった感じがします」

 住まいの選択肢を広げ、個人の価値観を許容できる社会を作ることは、まさにコリビング(Co‐living)サービスとしてのハフが目指すところだ。代表の大瀬良亮(おおせらりょう)さんが説明する。

「コリビングとは、職住近接の共同住宅。いま世界中でコリビング施設が増えています。日本の地方は世界にとって魅力的なコリビングの場になれる。そう考えて2018年に長崎でサービスを立ち上げました」

 長崎でハフが直接運営する施設「HafH Nagasaki SAI」は、コリビングの思想を象徴するような場所だ。そこで成立しているのは「ゆるいコミュニティー」。

 例えばLINEのオープンチャットには、利用者だけでなく地元の人も含め様々な人が出入りする。地域の情報を紹介してもらうこともできるし、「今日これから行きます」と呼びかければ、誰かがご飯に誘ってくれることもある。

「行った先で人と出会いたい人もいるし、一人になりたい人もいる。どちらの過ごし方も尊重されることが大事だと思っています」

 という大瀬良さんの言葉通り、強制もされない、拒まれもしない、オープンな空気がそこには漂っている。(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年8月10日-17日合併号より抜粋