厚生労働省の集計によれば、約50日続けた緊急事態宣言を解除した5月25日の全国の新規感染者は20人。ピークの4月10日に708人だったものを、3月中旬以前の水準にまで引き下げ、感染の波を封じ込めたように見えた。しかし、約1カ月後の6月28日には再び100人を突破し、7月に入ると右肩上がりで増え続け、29日には千人を一気に突き抜けて1200人を超えた。しかも、これまで累計で1万人以上の感染者を出して、エピセンターとしてGoToキャンペーンの対象から外された東京だけでなく、大阪府は200人超、愛知、福岡両県も100人を超えた。そして31日には、東京都は463人、沖縄県は71人と最多を更新した。

■PCR増やすしかない

「ウイルスの潜伏期間を考えれば、GoToキャンペーンや4連休の影響が出るのは早くても8月上旬だから、7月末の数字にはまだ反映されていない。にもかかわらず名古屋や大阪、福岡、沖縄でこれだけ急増したことは、大規模な人の移動より前に各地に感染者が潜在していたことを物語ります」

 医療ジャーナリストでもある森田豊医師はこう警鐘を鳴らす。

 さらに感染経路不明の割合が6割を超えるようになり、5月から7月半ばまでほとんど新規ゼロの状況から1日100人を超すまでに激増した名古屋市では保健所や医療機関の対応が追いつかず、発熱などの症状が続くのに検査が受けられない「PCR難民」の存在も報告されている。

「都知事が新宿や池袋の夜の街対策という言葉を発していた7月上旬ごろなら、『クラスター退治』という日本の最強の武器が通用したかもしれない。しかし、市中感染がここまで拡大したらPCRを大幅に増やすしかない。多くの病気では症状が出た人に検査をして適切な治療をするのが原則ですが、症状がない場合も多く、無症状や軽症者に対して有効な治療薬がない現状では、感染者をできるだけ見つけて隔離するしかない。今はその原点に戻るしかない」(森田医師)

(編集部・大平誠)

AERA 2020年8月10日-17日合併号より抜粋