AERA 2020年8月3日号より
AERA 2020年8月3日号より

 コロナ禍で、医学部志願者の減少傾向に拍車がかかるかもしれない。専門家は「本気の受験生にはチャンス」とエールを送る。AERA 2020年8月3日号から。

【学部系統別志願者数の推移と21年度の予想はこちら】

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 医学部のトレンドも見てみよう。国公立大医学部医学科の志願者数は減少傾向で、倍率も13年度の5.3倍から20年度には4倍に低下。競争は緩和している。河合塾の教育情報部部長の富沢弘和さんによれば、「明らかに浪人が減っている。以前は成績が優秀なら医学部というのが常識だったが、最近は優秀層の一部が情報系にシフトしている。それも志願者が減っている一因」だという。

 大学通信常務取締役の安田賢治さんは人口減で医師余りの時代が到来し、医学部の定員も志願者も減っていくと見る。実際、政府も22年以降は定員を減らす方向だ。

 気になる来年度の医学部入試について識者たちは、減少あるいは横ばいを予想しつつ、「読みにくい」と口を揃える。旺文社の「蛍雪時代」編集部大学入試分析チーフの小林弘明さんは、本来は不況に強い資格系で人気が上がるはずだが、コロナで医療現場の激務や危険度、いわれなき差別などが図らずも明らかになったとして、敬遠される可能性を指摘。

 安田さんも「今の高校生は人を助けたい意識が強く、志望者が増えてもおかしくないが、院内感染の問題で二の足を踏む可能性もあり、不透明」と話す。

 ただ、志願者が減るのは、本気で医学部を志望する受験生にとっては朗報だ。エキスパートたちは「今は狙い目なので、高い志を持つ受験生には是非頑張ってほしい」とエールを送る。(編集部・石臥薫子、ライター・柿崎明子)

AERA 2020年8月3日号より抜粋