日本ではできないだろう役づくりも体験した。

山下:僕が演じた役にはマギーという恋人がいるんですが、アクティングコーチに「今日は休みなので、二人だけでデートしてきてください」と言われて。ドライバーさんがいろんな所に連れていってくれて、二人で美術館に行ったり、海に行ったり、散歩をしたりと、本当にデートをしました。どんな場所で生まれたのかとか、ずっとお互いの話をして。僕は、小さい頃は宇宙飛行士になりたくて、でも虫歯ができて諦めて、宇宙の次に遠くに行ける芸能界を目指したこと、アイドルのボーイズグループがいっぱいいる事務所に所属していて、こんな歌を歌ってるんだ、とか話したかな。ゼロから相手を知ることで、当然、気持ちにも変化が生まれる。それは目に見えないようで、映像にも映り込むと思うんです。まぁ、日本じゃ絶対にできないと思うけど(笑)、台本には描かれない裏の部分の掘り下げ方はとても勉強になりました。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2020年7月20日号より抜粋