野田:ツアーが延期になって、会社や音楽活動が存続できなくなる危機感を強く抱きました。

 僕自身は、今回の一件を通じて、「何が起きても自分の足で歩いていくしかないんだな」ということを強く感じました。国に期待もしないし、補償もあてにしない。

 バンドを始めた頃のようなマインドに戻っていますね。誰にも泣きつくことができないのであれば、もう覚悟を決めてやるしかない。

 一方で、この数カ月間、音楽で生きていくことの意味や、音楽が世の中から求められていることについて、改めて考えさせられることも多くありました。

 今の社会や、もう少し先の社会で、はたして自分はどんな音楽を鳴らせるのだろうかと、すごく考えました。

 明るく楽しい音楽も間違いなく必要です。でも、ただ「頑張ろう」と励ますだけでは満たされない感情を抱えている人たちもたくさんいる。そういう人たちを、音楽は勇気づけたり、癒やしたりできるのか。

 今後、いろいろな形の音楽が問われるし、生まれてくるんじゃないかなと思います。

 これからどんな音楽を生み出していけるのか。その展望はまだ見えない。しかし野田のまなざしは、すでに未来を見据えている。

野田:今は迷いの中で、その過程さえもさらけ出しながら進んでいる状況です。1カ月前と1カ月後では、状況が全く変わっている可能性もありますし。ただ、皆と同じ時代に生きて、同じ空気を吸って感じたことを、僕は音楽にし続けていくしかない。

 その先で、実現するのが半年後か1年後になるのかはわかりませんが、やっぱりライブがしたい。全国ツアーが延期になったときも「払い戻しせずにいつまでも待ってます!」と言ってくださる方がいて、僕自身、すごく勇気づけられました。そのエネルギーが集まってツアーが再開できたときは、すごいライブになるだろうなと、今から楽しみでもあるんです。

 いろいろな感情が込み上げてしまって、もしかするとまともには歌えないかもしれませんね(笑)。

(ライター・澤田憲)

AERA 2020年6月22日号