東京アラートについて、北九州市出身の国際医療福祉大教授(公衆衛生学)で厚生労働省の対策にも関わる和田耕治さん(45)は、そもそも人々の警戒感や緊張感を維持するのは難しく、早めに注意を喚起したことは評価できるとしつつ、こう指摘する。

「どういう点で規制や要請を強め、都民にどう行動を変えてほしいかを具体的に示せるかどうかがカギです。『各自で考えて』ではなかなか伝わらない」

 一方で、院内感染や夜の店などリスクの高い場所での流行にとどまっている東京と、限定的ではあれ地域内での感染が確認されている北九州とは違いがあるとして、こう話す。

「たとえば1日に始まったばかりの学校を、東京アラートを機にまた休校へとなると、親と子ども、双方への負担が大きすぎる。そこは引き続き、感染者の特徴をみながら考えていくべきでしょう」

 さらに長いスパンでの第2波との向き合い方を提示するのは、浜松医療センター院長補佐で感染症に詳しい矢野邦夫さん(64)だ。

 矢野さんはいまの北九州や東京の状況について、まだ第2波ではなく、「第1波の最終盤、残り火のような段階では」と見る。

「新型インフルエンザもそうですが、まず最初の年は第1波として季節に関係なく流行します。新型コロナは冬に感染力を増しますから、第2波はこの冬に来るのでは。そして来年からは『冬の感染症』になると思います」

 コロナが全国的には収束傾向にあるのは、緊急事態宣言のおかげではなく、夏に向かうこの季節が味方しただけ、と言う。

「南半球の国々で感染が拡大傾向にあるのは、季節が要因だと思います。この7月、8月の『ブラジルの冬』がどうなるかは要注目です。今冬の日本の状況を予測する参考になりますから」

 今年の冬、新型コロナが、まだ多くの人が免疫を持たず感染しやすいという「新型ならではの実力」と、呼吸器系が寒さで痛めつけられている冬に感染力が強まる「コロナ本来の実力」と、両方を兼ね備えて襲ってくる。それが「本物の第2波」だろうと、矢野さんは言う。

「コロナはこの先2、3年は間違いなく付き合わなくてはならない病原体です。ただ、免疫ができ、ワクチンもできる3年後になれば、『普通の風邪』という位置づけになっていると思います。そこまでの我慢。真剣勝負は、今年の冬です」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年6月15日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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