日常に戻れる期待と、第2波への不安が入り交じる。「東京アラート」発令の翌朝、JR東京駅前ではほとんどの人がマスクを着けていた/6月3日午前8時25分 (c)朝日新聞社
日常に戻れる期待と、第2波への不安が入り交じる。「東京アラート」発令の翌朝、JR東京駅前ではほとんどの人がマスクを着けていた/6月3日午前8時25分 (c)朝日新聞社

 韓国で、北九州で、東京で。ウイルスが再びその勢力を広げつつある。だが専門家は「今は第1波の残り火」とみる。本格的な再襲来に備え必要なことは。AERA 2020年6月15日号は専門家に詳しく聞いた。

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 北九州市と同様、いったんは感染拡大を抑えながらも「第2波」に直面しているのが韓国だ。きっかけは5月8日にソウルのクラブで起きた大規模なクラスター。ジャーナリストの朴眞煥(パクジンファン)さん(44)は、その後の5次、6次と感染が連なるいわゆる「n次感染」が韓国社会に大きなショックを与えていると指摘する。

「5月24日に物流センターで起きたクラスターも話題になりましたが、その物流センターで感染が確認された1人も、何次も遡るとクラブで感染した人とのつながりが確認されました。クラブでの集団感染がいまも市中感染の原因になっている。やはり初期段階で検査と隔離を徹底しないと、これほど一気に広まることを、あらためて見せつけられた例だと思います」

 そこで韓国がさらに力を入れ始めたのが、「追跡」。そのために導入が検討されているのが、感染リスクの高い施設や店の利用客情報を電子取得して管理する「電子出入り名簿」だ。

 客は名前や電話番号などをQRコードに登録し、施設に入る際にこれを提示する。その情報は政府側に電子登録されるが、個人情報に配慮し、情報は4週間後には自動的にサーバーからは消去されるという。政府は6月10日の本格導入をめざす。

「QRコードを活用すれば、リスクの高い施設や夜の店から感染者が出た場合、効率よく追跡でき、n次感染を防げる。生活の制限はなるべくせず、日常に戻りつつ感染を広げないためには、『追跡』を徹底するのが有効という考え方です」(朴さん)

 同じく夜の街への対策を強調し、第2波の予兆に警戒するのは、東京都だ。6月に入り、感染者数が再び増加傾向に。2日には警戒を呼びかける「東京アラート」が発動され、小池百合子知事は「課題は院内感染と夜の繁華街」と強調した。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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