教えてくれるのは、プリンを誰よりも愛し、試作したプリンは3万種類以上、“幸せなプリンで幸せな生活”を理念とする「国際プリン協会」を立ち上げ代表に就いた濱口竜平さんだ。

 プリンの原型はイギリスで、長い航海をする船乗りが発祥とされる「卵液と他の材料を蒸しあげた日持ちのするプディング」と、「家族の朝食の残り卵とパンを牛乳に浸して食べたとされるパンプディング」の2種類があるという。

 今のプリンに近い「カスタードプリン」が生まれたのは18世紀ごろのフランスであり、日本には江戸時代後期から明治初期にもたらされたとされる。「卵百珍」とも呼ばれる江戸時代の人気料理本『万宝料理秘密箱』には、卵を寒天で固めた冷たい料理「冷し卵羊羹」のレシピが掲載されている。

 濱口さんは、その後「プリンアラモード」発祥の地とされる横浜のホテルニューグランドから、プリンが全国に広まっていったのではないかと推察する。

 戦後の1960年代には街のケーキ屋さんなどでも広く売られ、一般家庭で食べられるようになったプリン。64年にはハウス食品がお湯を加えて簡単に作れる「プリンミクス」を発売。自宅で作ったという読者も多いのではないだろうか。そして72年、プリン界の大横綱プッチンプリンが発売されることになる。(ライター・伊藤彩子)

AERA 2020年6月8日号より抜粋